2007 Fiscal Year Annual Research Report
カントとトマス・リードの知覚論および心の哲学-認識論的自然主義の問題-
Project/Area Number |
06J00682
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
長田 蔵人 Kobe University, 人文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | カント / 純粋理性批判 / 超越論的演繹 / 超越論的図式論 / カテゴリー / 図式 / 可能的経験 / 経験的認識 |
Research Abstract |
第二年度の研究では、認識における構成的原理というカント主張の核心部分を担う、『純粋理性批判』における超越論的演繹論および超越論的図式論の本質的な意味と役割について考究した。両者は従来、経験的認識を成り立たせる構成的原理であるカテゴリーの客観的実在性の基礎づけ、という同じ一つの問いに対する一般的・抽象的な議論と個別的・具体的な議論、という扱い方の違いとしてのみ捉えられてきた。その結果、演繹論と図式論の課題の根本的な違いは覆い隠されてきた。それに対して研究者は、演繹論の限界という観点からその使命の本質を捉えなおし、次のような理解に達した。すなわち、演繹論とはカテゴリーの「適用」問題の解決を与えるための議論ではなく、むしろ、感性的直観とカテゴリーとの相互的な要請関係を掘り起こすことによって、適用問題をまさに問題として成り立たせているカテゴリーの本質、すなわち「経験の可能性の制約」であるという本質をあきらかにする議論にほかならない。そしてこれを受けて図式論は、もう一方の「可能性の制約」である純粋直観形式とカテゴリーとの協働の原理をあきらかにし、ここで初めて適用の問題が本来的に語られることになる。そしてこの協働の帰趨は、経験的認識の真理性の基礎としての〈可能的経験の統一〉にある。こうして、演繹論において「可能性の制約」として導き出されたものが、経験の側から語られるための局面の転換を成し遂げるのが図式論であり、ここにおいてカテゴリーはようやく、経験的認識におけるその客観的実在性について語られうるようになる。以上によって、経験的認識の構成というカントの考え方がいかなる論理によって支えられているのかがあきらかにされた。 当年度ではさらに、カントとスコットランド啓蒙思想の同時代性に光を照らすという研究計画の一環として、アダム・スミスの道徳哲学、特にその「良心」の概念についても探求した。
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Research Products
(2 results)