2007 Fiscal Year Annual Research Report
都市エリートによる地方文化の創造と地域アイデンティティに関する文化地理学的研究
Project/Area Number |
06J00686
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
濱田 琢司 Kobe University, 人文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 伝統性 / 陶磁器業 / 消費の地理学 / 文化仲介者 / 沖縄 / ビームス・フェニカ / 濱田庄司 |
Research Abstract |
申請中の研究計画に沿い,昨年度より引き続き下記の通り研究・調査を遂行した。 1.先行研究の把握・整理:近年の消費の地理学,文化仲介者に関わる研究,および近代期の日本の工芸をめぐる文化社会的状況に関わる諸研究などを整理し,近現代日本の地方文化(特に地方の陶磁器工芸)の価値付けと消費のプロセスを考察する際の理論枠組みの編成を試みた。 2.陶器生産地の調査:前年度のプレ調査を踏まえ,特に沖縄を中心として,近代期の文化エリートによる伝統性の発見・価値付けのプロセスや,戦後の変容,近年の消費動向などを,資料調査および聞き取り調査にて検討した。 3.近代期窯業に関する資料調査:上記2.で検討する事例をめぐる時代状況や,近代期の窯業界にあって重要な文化エリートとなりうる数名の人物に関して,『大日本窯業協会雑誌』や『工政』などの雑誌記事の閲覧を中心とした調査を,主に国立国会図書館,東京工業大学付属図書館にて行った。 4.現代における地方文化消費の状況:一方,地方文化消費の現代的状況の検討として,セレクトショップ・ビームスについて聞き取り・資料調査を実施した。伝統的な手仕事をファッションという新たな文脈で消費しようとするその取り組みに注目し,担当のバイヤーらを,文化的仲介者として位置づけつつ,地方文化消費の現代的状況の一例として考察するための研究準備とした。 5.成果発表など:(1)1.での検討の内容も含め,産地の伝統性に関して,これまでのフィールドワークの経験をもとに「「伝統性」を考える」(梶田真他編『地域調査ことはじめ』ナカニシヤ出版)にて検討した。(2)3.で検討した文化エリートのうち,民芸運動に関わった陶芸家である濱田庄司と彼の蒐集について,「濱田庄司の蒐集と益子参考館」(『民芸』656)としてまとめた。(3)また2.および3.の調査の一部を,「「発展」と「改良」の近代窯業と沖縄陶業」として壺屋焼物博物館において発表した。
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Research Products
(3 results)