Research Abstract |
申請時の研究計画を踏まえつつ,下記の通りの研究を遂行した。 1.既存研究の整理:本研究の初年度の課題の一つ「理論的枠組みの整理」について,前年度(17年度)に刊行した著書(濱田琢司『地域文化と民芸運動』思文閣出版,2006.2.)も踏まえつつ,人文地理学・文化人類学のモノや消費をめぐる研究についての整理を実施,現在も継続している。 2.フィールド・事例のプレ調査など:本研究では,工芸品(とくに陶磁器)の価値付けや文化的消費のプロセスから,地方文化の価値の形成および地域アイデンティティの創造について考察するものであるが,本年度は,(1)近代期の陶磁器の動向について新聞記事などの資料を収集,(2)産地の価値化に影響を与える知識人や芸術家について,これまで研究してきた民芸運動同人を中心に調査を継続,(3)文化エリートのまなざしによる価値の発生を検討するための産地として,沖縄陶器産地および栃木県益子を設定し,このプレ調査,(4)前記(3)との比較として,デンマーク及びフィンランドの工芸村の視察,などを行った。 3.消費の場についての調査:本研究では日本の伝統工芸をめぐる近年の新たな消費の動きについても注目し,「2」の調査も絡めつつ検討する予定だが,本年度は,そうした消費を作り出す主体でもある,セレクトショップや雑誌編集者らに対する調査も行った。この成果については,「1」で整理中の理論的枠組みを踏まえ,論文を執筆中である。 4.成果発表など:(1)これまでの研究対象である民芸について,「2」での調査も踏まえつつ,報告した(口頭発表)。(2)民芸運動の同人である柳宗悦と濱田庄司について,「2」での知見も加え,小論を発表。(3)「3」の調査の一部は,著書(『あたらしい教科書11 民芸』)の執筆を通して参与調査的に行った。本書は,研究成果の一つであるが調査過程の産物でもあり,「3」に記した通り,現在,その分析をまとめている。
|