2007 Fiscal Year Annual Research Report
契約法における「公正」の原理-米国非良心性法理を手がかりに
Project/Area Number |
06J00758
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
牧 佐智代 Kobe University, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 非良心性 / UCC |
Research Abstract |
1.本研究は、第一に、米国の非良心性法理の有している解釈論的多様性と原理論的側面との二つを考察することにより、我が国の現代契約法論における議論とのパラレルな考察を行い、かかる原理的考察を基礎とした解釈論を展開すること、第二に、それらを我が国における消費者契約法の解釈への示唆として応用を試みることを目的としているが、今年度は、主に第二の点、すなわち、昨年度の外国法研究を踏まえ我が国の解釈論への応用を試みた。具体的には、我が国の消費者契約法は、四条において事業者の勧誘行為の態様を問題として取消の効果を認め、八条以下において消費者の利益を一方的に害する条項の無効を定めているが、これは、契約締結過程の規制と契約内容の規制とが両輪を為して初めて「契約の公正さ」が担保されるという考えに基づくものであり、かかる原理的基盤と具体的ルール構築の仕方において、米国非良心性法理における「契約環境の公正さ」と「契約内容の公正さ」の議論との共通点を有していることをまず明らかにした。さらに、消費者契約法における、契約締結過程と契約内容の両側面の規律という方途は、契約の「公正さ」とは何かという問題認識を有した現代の民法学における思想的基礎の変容が同法に集約されているからに他ならないことを明らかにし、同法の規定の解釈にとって、かような原理的基盤から立ち上げることの重要性を明らかにした。 2.以上のような消費者契約法という立法の検討を進めるのと同時並行で、判例法から契約締結過程の規律と契約内容の規律についてアプローチすることも併せて行い、その内、契約締結過程の規律法理として現在我が国において最も議論が活発であり、判決の集積も広く見ている「説明義務」についての最高裁判例研究については、判例評釈としてその成果を公表した。
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