2006 Fiscal Year Annual Research Report
温度制御した気相クラスターイオンの構造と反応性の研究の新展開
Project/Area Number |
06J00813
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤原 亮正 神戸大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 温度制御 / イオントラップ / 光解離分光 / ペプチド / エレクトロスプレーイオン化法 / 気相クラスター |
Research Abstract |
これまでの「気相クラスターの温度は制御できない」という常識を打ち破り、構造と反応性に対する温度の影響を分光学的に明らかにするため、気相クラスターイオンの温度制御技術を開発している。 本年度は、温度可変22極型イオントラップ(10-350K)を設計・試作し、その特性を調べた。これは気体ヘリウムとのソフトな多重衝突を利用した精密温度制御に適した特徴を持つ。長さ36mmで直径1mmのステンレス棒を、直径11mmの円周上に並べてRF電場を交互に印可した。トラップセルの材質は銅で、RF電極の絶縁と位置決め、ステンレス棒の支持には熱伝導率が高いサファイアを用いた。このトラップをヘリウム冷凍機のコールドヘッドに直結して冷却し、ヒーターを併用して温度可変とした。また、トラップを覆う輻射シールドとヘリウムガスの導入パイプも冷却している。気相クラスターイオンを最適な条件でトラップして温度制御するために、インピーダンスマッチングが不要なRF電源(10-30MHz、0-600V)を製作した。 エレクトロスプレーイオン源と八重極型イオンガイドを製作し、試作した温度可変22極型イオントラップを組み込んだ光解離分光装置を立ち上げた。トラップしたイオン量は、プロトン化トリプトファンで1パルスあたり約3万カウント(10Hzで動作、トラップ時間は80ms以内)であった。プロトン化ペプチドの光解離質量スペクトルと紫外光解離スペクトルを測定し、気相生体分子イオンを極低温に冷却して分光できることを確認した。また、温度制御したプロトン化ペプチドの赤外光解離スペクトルの測定に成功した。
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