2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J00827
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
竹安 大 神戸大学, 文化学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有標性 / 位置的有標性 / 摩擦音 / 知覚的要因 |
Research Abstract |
「摩擦音の方が閉鎖音よりも有標」という有標性について、自然言語の音素分布、幼児の音獲得、言語喪失(構音障害など)、歴史的音変化、方言などの幅広いデータをもとに検証し、さらに閉鎖音と摩擦音の位置的有標性についても分析した。その結果、閉鎖音と摩擦音の位置的有標性には非対称性が存在することがわかり、閉鎖音と摩擦音の有標性について議論する際には位置による影響を考慮する必要があることが明らかとなった。 以上のような有標性が生じる音声学的基盤を明らかにするため、日本語話者を対象に、日常に近い環境で閉鎖音と摩擦音の知覚実験を実施した。この実験の刺激音には日本語話者が発音した二拍の無意味語を用い、音源(CDプレイヤー)と被験者との距離を1m、5m、10mと変えた場合にどのような誤りが起こるかを調べた。また、比較のために同じ刺激音を用いて実験室での対照実験も実施した。対照実験では刺激音の音圧をコンピュータで三段階に調整し、ヘツドフォンを通して提示した。その結果、日常に近い環境で実施した実験では、音源からの距離が遠くなるにつれて、摩擦音のエラーが閉鎖音のエラーに比べて起こりやすくなったが、対照実験ではこのような傾向は見られなかったので、日常に近い環境での実験の重要性が示された。また、有標性が生じる要因の一つとして知覚的要因の存在が挙げられることも明らかとなった。 さらに、本年度は摩擦音と破擦音の間に生じる有標性についても予備実験を行った。この実験ではコンピュータで作成した摩擦音〜破擦音に至る音声の連続体を刺激音に用いて、日本語話者、英語話者、韓国語話者、中国語話者に対して聴取させ、摩擦か破擦の二択で強勢判断させた。結果、被験者の母語によって判断傾向が異なり、その異なりの度合いが幼児の音獲得などのデータと一致する傾向が見られ、やはり知覚的要因が有標性に関与している可能性があることが示唆された。
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Research Products
(2 results)