Research Abstract |
スチレン及びメタクリレート系モノマー[メタクリル酸メチル(MMA),メタクリル酸エチル(EMA),メタクリル酸イソブチル(i-BMA)]について,ノニオン性界面活性剤を用いた乳化重合を行い,生成高分子微粒子中に吸蔵された界面活性剤の定量を行った。その結果,初めてノニオン性界面活性剤の吸蔵化現象が見出されたスチレン-メタクリル酸乳化共重合系と同様に,上記の系においても界面活性剤の吸蔵を確認し,乳化重合に関する新たな知見である吸蔵化現象の一般性を示した。 さらに,乳化重合において最も基本的であり,盛んに検討が行われているスチレン系において,吸蔵化現象についての詳細な検討を行った。オキシエチレン鎖長の異なる,つまり親水性の異なる2種類の界面活性剤を用いて重合を行ったところ,親水性の低い方が粒子中に吸蔵されやすいことがわかった。この結果は,無乳化剤乳化重合により作製した粒子をモノマーで膨潤させた後,界面活性剤を後添加し,膨潤粒子中に分配された界面活性剤を定量した結果と同様の傾向を示した。これらのことから,界面活性剤の吸蔵化には,重合中に粒子が吸収しているモノマーへの界面活性剤の分配が重要であることが推察される。この推察を基に,界面活性剤とモノマーの親和性が小さい低温での重合,あるいは重合中の粒子がモノマーで膨潤されないようにモノマーフィード法を用いた重合を行うことで界面活性剤の吸蔵化を抑制することに成功した。 また,メタクリレート系モノマーにおいて,界面活性剤の吸蔵量はi-BMA, EMA, MMAの順に多くなった。この際の各系間での吸蔵量の差は,界面活性剤のモノマーへの分配のみでは説明し難い部分があり,界面活性剤とポリマーの相溶性が吸蔵化に及ぼす影響に関する検討の必要性を提起するものであった。
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