Research Abstract |
乳化重合は古くから広範に用いられており,近年では環境面への配慮から水系で行われる乳化重合に対する注目が一層高まっている。本研究は,乳化重合により作製された高分子微粒子中に,重合時に使用したノニオン性界面活性剤が取り込まれる(以下,吸蔵化と呼ぶ)現象についての検討である。乳化重合において重合の場を提供し,生成粒子の安定化を担うべく添加されている界面活性剤の吸蔵化現象は,合成時の問題だけでなく,フィルム形成時の物性低下などを招くことから,非常に重要な関心事である。また,これまでになされてきたノニオン性界面活性剤を用いた乳化重合に関する検討に対して再検討の必要性を投げかけるものであり,吸蔵化現象の解明は学術的にも工業的にも非常に有益である。 検討の結果,ポリオキシエチレン系ノニオン性界面活性剤Emulgen911を用いたスチレンとメタクリル酸の乳化共重合系において,仕込みメタクリル酸濃度の増加に伴い,粒子中への界面活性剤の吸蔵最が増加することを明らかにした。また,以前の^1H NMRと比べ,より簡便なGPCによる吸蔵量の直接的な定量法を確立した。これら2つの測定法により求められた吸蔵量は良い一致を示し,このことから重合時における各種ラジカルの界面活性剤への連鎖移動反応は無視できることが明らかとなった。さらには,メタクリル酸濃度が低い場合に見られていた副生微粒子の発生が,メタクリル酸濃度の増加に伴って抑制されることを見出し,吸蔵化か乳化重合の重合機構にも大きな影響を及ぼすことを明らかにした。 これまでにノニオン性界面活性剤が吸蔵された粒子をシード粒子として用いてシード乳化重合を行うことで,従来法で必要であったアルカリや酸・有機溶剤を全く使用しない簡便な中空粒子の合成に成功しているが,この時,シード乳化重合時の温度が中空構造の形成に大きな影響を及ぼすことを明らかにした。
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