2006 Fiscal Year Annual Research Report
RNAi法を用いた、昆虫の脱皮・変態におけるホルモンシグナリング経路の解明
Project/Area Number |
06J00913
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
水口 智江可 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫科学研究領域制御剤標的遺伝子研究ユニット, 特別研究員(PD)
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Keywords | 幼若ホルモン / RNAi / アラタ体 / メチル基転移酵素 / エポキシ化酵素 |
Research Abstract |
昆虫体内で内分泌される幼若ホルモン(JH)は、脱皮ホルモンと共に脱皮・変態を制御しており、血液中のJH濃度の増減によって、幼虫から蛹、成虫へと成長するタイミングが厳密に調節されている。JHは昆虫のアラタ体において生合成されるが、JH生合成に関わる酵素群の同定・機能解析はまだあまり進んでいない。そこで本年度の研究では、このJH生合成の最後のステップでメチル化とエポキシ化を触媒する酵素に注目し、鞘翅目昆虫コクヌストモドキで発現解析およびRNAi法による機能解析を行った。まずコクヌストモドキのゲノム情報を利用して、既にカイコで報告されているJH酸メチル基転移酵素のホモログを3つ(TcMT1,TcMT2,TcMT3)クローニングした。これら3種の遺伝子に関して大腸菌で組換えタンパク質を作成したところ、活性型JHの前駆体であるファルネセン酸をメチル化する酵素活性を有するのはTcMT3のみであった。またコクヌストモドキ若齢幼虫に二本鎖RNAを注射して遺伝子をノックダウンしたところ、TcMT3の場合のみ、蛹への早熟変態が誘導された。これはRNAiによってJH生合成が抑制され、体内JH濃度が通常よりも低くなったためだと考えられる。In situハイブリダイゼーションの結果、TcMT3はアラタ体でのみ発現していることが明らかになった。これらの結果から、コクヌストモドキにおいてJH生合成のメチル化反応に関わるのはTcMT3であることが示された。 一方、JH生合成のエポキシ化反応を触媒するシトクロムP450遺伝子(CYP15A)は過去にゴキブリで報告されている。そこで、コクヌストモドキにおけるそのホモログ(TcCYP15A)を単離した。定量PCRの結果、TcCYP15Aは幼虫終齢期半ばと羽化直前に特に強く発現していた。若齢幼虫に対してRNAiを行ったが、早熟変態は誘導されなかった。これとは別の遺伝子がエポキシ化反応に関与している可能性があるため、現在、他の候補遺伝子の探索を行っている。
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