2008 Fiscal Year Annual Research Report
寄生バチMelittobiaにおける死を伴う雄間闘争の進化
Project/Area Number |
06J01102
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
安部 淳 Gifu University, 応用生物科学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 生態学 / 進化 / 性比調節 / 雄間闘争 / 寄生バチ / Melittobia australica |
Research Abstract |
性比調節(雄と雌の子供をどのような割合で産むべきか)の問題は、進化・行動生態学の中で、最も成功をおさめてきた分野のひとつである。しかし、この分野の問題のひとつに、理論研究は出生時の性比を予測するのに対し、実証研究では研究者が雌雄を見た目で区別できるようになったときの性比が測られている点があげられる。本研究では、これまでの理論よりも極端な雌偏向性比を示す寄生バチMelittobiaの性比調節行動について検討した。本属のハチは、幼虫期の行動についてはこれまで不明であったが、雄の成虫どうしは殺し合いの闘争を行うため、羽化時の性比は産卵時の性比よりも雌に偏る可能性が示唆されている。そこで、マイクロサテライトDNAマーカーを用いて産卵時の性比を調べたが、羽化時の性比と変わらず、母親が極端な雌偏向性比で産んでいることが明らかになった。また、様々なタイミングで産卵中の母親を取り除き、雌雄の生産スケジュールを調べたところ、産卵の初期に雄を1卵産み、その後はコンスタントなタイミングで、間隔をあけて少数の雄を産んでいた。性比の分散はランダムな二項分布による分散よりも有意に小さく、母親が正確に雌雄を産み分けていることが明らかとなった。このような雌雄の産み方と性比は、動的ゲームモデルを用いて既存の理論に雄成虫の闘争の効果を組み込んだモデル(Abe et al.2008)の予測に一致し、母親は後から羽化する殺されやすい雄をあまり産まず、雄間闘争を避けるように進化したものと考察された。
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Research Products
(5 results)