2007 Fiscal Year Annual Research Report
寄生バチMelittobiaにおける死を半う雄間闘争の進化
Project/Area Number |
06J01102
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
安部 淳 Gifu University, 応用生物科学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 生態学 / 進化 / 雄間闘争 / 性比 / 寄生バチ / Melittobia australica |
Research Abstract |
一般的に有性生殖を行う動物は、交配を行わないと次世代を残すことはできない。しかし、ハチやアリなどの昆虫は、半数倍数性の性決定様式を持つため、交尾を行わなかった処女雌であっても、半数体の雄のみは生産することができる。寄生バチMelittobiaでは、母バチが単独で産卵するとき、少数の雄卵のみを生産し、自らの息子と交尾した後、正常に雌雄を産卵することが知られていた。処女雌が交尾雌と同じ寄主に産卵するときは、単独で産卵するときよりも統計的に有意に多くの息子を産卵することを、今回初めて明らかにした。この処女雌の産卵調節行動は、数理モデルによって予測された進化的に安定な戦略とも定性的に一致し、自然選択の結果適応的に進化したものと考えられる。数理モデルによる予測では、処女雌は実際よりもさらに多く雄を生産すると予測されたが、この定量的なずれの原因として、本属特有に見られる雄間闘争が関与している可能性が考えられた。 Melittobia母バチは500以上の卵を2から3週間にわたって産み続ける。息子と娘の生産スケジュールを調べた結果、母親は少数の息子をコンスタントに少しずつ生産していることがわかった。この雌雄の生産スケジュールは、一定の確率に従ってランダムに雌雄を産み分けていると仮定したときの分散(2項分布に従う分散)に比べ、統計的に有意に小さいものであった。この結果は、母バチが雌雄をランダムに産んでいるのではなく、あるスケジュールに従って正確に産み分けていることを示している。このような正確な産み分け能力が進化した原因として、雄間闘争を避けるように息子を産む間隔を正確に空けているためであると考えられた。
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Research Products
(5 results)