2006 Fiscal Year Annual Research Report
マダニの中腸・唾液腺由来の抗原虫物質に関する分子生物学的研究
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06J01138
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
梅宮 梨可 岐阜大学, 連合獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | マダニ / フタトゲチマダニ / 中腸 / 唾液腺 / 抗原虫物質 / 分子生物学 / マクロファージ遊走阻止因子 / 血管新生 |
Research Abstract |
受入研究員は、フタトゲチマダニHaemaphysalis longicornisの唾液腺および中腸のcDNAライブラリーから、サイトカインの一つであるマクロファージ遊走阻止因子(MIF)の相同遺伝子を単離・同定した。H.longicornis MIF(HlMIF)のcDNAは全長523bpであり、ORFは351bpであった。HlMIFの推定産物は116アミノ酸から構成され、推定分子量は12.3kDaであった。また、RT-PCRおよびウエスタンブロットにより、成ダニにおけるMIFの発現量は、吸血時に増大することが明らかになった。RT-PCRでは、ほとんどの臓器においてHlMIFの発現が認められたが、免疫組織化学染色により、内在性HlMIFは唾液腺細胞、中腸上皮細胞、外皮細胞の細胞質内に強く発現していることが示された。さらに、組換えHlMIF(rHlMIF)およびヒト末梢血単核球を用いたChemotactic assayをおこなったところ、rHlMIFは濃度依存的に単核球の遊走を阻止した。すなわち、HlMIFは哺乳動物MIFと同様の生物活性を有することが示唆された。これらのことから、HlMIFの機能は、(1)吸血部位における宿主マクロファージの遊走を阻止することによって吸血を促進すること、(2)マダニ体内における細胞増殖・分化に関わることが推測された。この結果に基づく論文は、Experimental parasitologyに掲載された。 また、作製したrHlMIFを用いて血管新生アッセイを行ったところ、rHlMIFはヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の管腔形成を抑制した。このことから、HlMIFは血管新生を抑制することが示唆された。しかしながら、血管新生抑制のメカニズムが不明であるため、来年度も引き続き検討する必要がある。
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Research Products
(1 results)