2007 Fiscal Year Annual Research Report
光電子の分子座標系角度分布測定による光イオン化ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
06J01229
|
Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
山崎 優一 High Energy Accelerator Research Organization, 特質構造科学研究所, 特別研究員(SPD)
|
Keywords | 角度分解光電子分光 / 配向分子 / 内殻イオン化 / 分子軌道 / 運動量画像観測 |
Research Abstract |
本研究は、分子座標系での光電子角度分布(MF-PAD)測定による内殻電子イオン化ダイナミクスの研究を新たな観点から発展させ、新しい研究分野の開拓を目的としている。平成19年度は主に、屈曲型分子および希ガスクラスターについて内殻イオン化ダイナミクスのMF-PADによる研究を行った。非直線分子に対するMF-PAD測定はこれまでに成功例が無く、まずは、水や二酸化窒素などの屈曲分子についての本格的な測定を行った。その結果、最も基本的な水分子について、MF-PADを三次元的に測定することに成功し、MF-PADにおける非直線形分子特有の立体的な対称性および配向を実験的に明らかにした。さらに、光電子の波としての性質に着目し、光電子回折の観点からも水のMF-PAD形状を解析し理解することに初めて成功した。一方で、希ガスクラスターの内殻イオン化ダイナミクスの研究にも並行して着手した。ガスノズルの位置および温度を実験的パラメータとする冷却型希ガスクラスター生成装置を新たに設計・作成し、既存の運動量画像分光装置に取り付けた。液体窒素温度においてNe二量体(Ne_2)を安定して生成させ、Ne_2の内殻光イオン化過程について光電子および光イオンの運動量ベクトル相関を初めて観測することに成功した。その結果、Ne_2が解離するまでのタイムスケールが大きく異なる二つの解離チャンネルを見出し、解離チャンネルの選別によって光電子角度分布が大きく異なって観測される様子を示した。フェムト秒で進行する解離過程においては、近年注目を浴びている原子間クーロン崩壊(ICD)が重要な役割を演じていることを明らかにし、さらにNe_2中の片方のNe原子に局在した内殻ホールの影響がMF-PADに明瞭に観測された。
|