2006 Fiscal Year Annual Research Report
広い視覚環境における空間認知特性の解明と行動シミュレーションのためのモデル化
Project/Area Number |
06J01377
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
十河 宏行 独立行政法人産業技術総合研究所, 人間福祉医工学研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | Saccade / Curved trajectory / Spatial inhibition |
Research Abstract |
視線を動かして特定の対象を探し出す「視覚探索」は,広い視覚環境における人間の基本的な行動のひとつである。本年度は,「視線を向けることを抑制している領域を避けて急速眼球運動(サッカード)の軌道が湾曲する」という現象を利用して,人間が視覚探索を効率的に行うメカニズムを調べた。 我々は昨年度,サッカード軌道の湾曲を通じて,視覚探索中には復帰抑制より早く機能し始めて,復帰抑制が有効になる前に効果が減衰する抑制メカニズムがあることを示した。本年度は,この抑制メカニズムが(1)抑制すべき対象が複数個同時に出現した時に,どのような軌道のサッカードが行われるのか,(2)室内などの日常的なシーンにおける視覚探索においても同様に機能するのか,(3)軌道を湾曲させる抑制メカニズムは抑制すべき対象の移動に追従するか,の三点を検証する実験を行った。その結果,(1)に関して,二箇所を抑制した時のサッカード軌道はそれぞれの場所を抑制した時の軌道の和で近似できることが明らかになった。また,この結果はそれぞれの位置への抑制効果が加算されてサッカードの飛び出し角に影響を与えるモデルで説明できることが示された。(2)に関しては,日常的なシーンにおいてもO/C探索画面と動揺のサッカード軌道の湾曲が起こることが示された。(3)に関しては,軌道を湾曲させる抑制メカニズムは対象の移動に追従しないことが明らかになった。(2)および(3)の特徴は復帰抑制と異なっており,軌道湾曲を生む抑制と復帰抑制のメカニズムは,効率的な視覚探索の実現のために相補的に働く可能性が示唆された。以上の結果まとめた英語論文が二編受理され,英語論文一編と日本語論文一編が現在審査中である。
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Research Products
(2 results)