2006 Fiscal Year Annual Research Report
ホソヘリカメムシにおける宿主-共生細菌間相互作用に関する研究
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06J01387
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
菊池 義智 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物機能工学研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | 共生細菌 / 細菌 / 共生 / 進化 / カメムシ / バーコルデリア |
Research Abstract |
本研究は、ホソヘリカメムシ類において報告されている外界獲得型細菌共生系(母子伝達を伴わず毎世代環境中から共生細菌を獲得する系)を対象とし、遺伝子レベルでの宿主-共生細菌間相互作用の実態解明を行い、これを通して昆虫における細菌共生系の進化・維持機構の理解を目指している。3年計画の初年度は、複数の共生細菌株の培養系確立、及びこれらの形質転換系の確立を行った。いくつかの共生細菌株を確立後、これらの培養条件・増殖速度など基礎情報を調査した。その結果、共生細菌の増殖がNaClにより強く阻害されること、安定した増殖には糖類を必要とすること、代表的な抗生物質に対して感受性であること、最小培地においても増殖が可能であること、などが明らかとなった。これら基礎情報は共生細菌の培養条件の最適化につながるとともに、研究自体の迅速化にもつながった。 共生細菌の形質転換系を確立するため、各種プラスミド・トランスポゾンの導入を網羅的に行った。プラスミド等の導入は、大腸菌を用いた接合により可能であった。その結果、colE1系の複製起点を持つプラスミドは共生細菌内で比較的安定だが、p15A・R6K系は複製不能であることが明らかになった。またトランスポゾンについては、mTn5を用いたrandom-mutagenesis、及びmTn7を用いた部位特異的Tn挿入のいずれも有効であった。特に前者においては、すでに栄養要求性変異株やバイオフィルム形成変異株など宿主との相互作用に必須と思われる機能の欠失株を得ることに成功しており、来年度以降の研究進展が期待できる。海外渡航期間においては、特に上述の共生細菌形質転換系の確立を行った。また、期間中に得られた結果や本研究全体を通しての結果について海外の優れた研究者らと有益な意見交換を行うことができ、今後の展望を明確にすることができた。本研究により得られた結果の一部を国際学会で発表すると共に、国際雑誌に投稿した。
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