2007 Fiscal Year Annual Research Report
ホソヘリカメムシにおける宿主-共生細菌間相互作用に関する研究
Project/Area Number |
06J01387
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
菊池 義智 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 生物機能工学研究部門, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 共生細菌 / 細菌 / 共生 / 進化 / カメムシ / バークホルデリア |
Research Abstract |
本研究は、ホソヘリカメムシ類において報告されている外界獲得型相利共生系(マメ科植物の根粒菌のように毎世代土壌環境中から相利共生細菌を獲得する系)を対象とし、遺伝子レベルでの宿主-共生細菌間相互作用の実態解明を行い、これを通して昆虫における細菌共生系の進化・維持機構の理解を目指している。 3年計画の2年目は、カメムシ多個体からの共生細菌株単離、単離株の細菌学的同定、カメムシへの再感染系の構築、および宿主への影響調査を行った。カメムシ49個体の共生器官内容物より共生バーコルデリア105株を得ることに成功し、これらを凍結保存するとともに以下の実験に用いた。分離細菌株について16S rRNA遺伝子の比較、各種同定キットを用いた検査、GC含量測定、FAME解析、各種細菌染色法、顕微鏡観察等により同定を行った結果、共生バーコルデリアは少なくとも遺伝的・生理学的に異なる5種に分類されることが新たに明らかとなった。これらめ調査は共生細菌の生理学的特性とその多様性を明らかにし、宿主-共生細菌間相互作用の実体を明らかにするための基礎情報を提供する。 いくつかの単離共生細菌株を用い、カメムシへの人工感染系の構築、およびその宿主への影響調査を行った。先行研究より2齢期に共生細菌の感染が起こることが報告されている。脱皮直後の2齢若虫に各希釈系列の共生バーコルデリア(リファンピシン耐性、Rf+)を与え、羽化後に共生器官内容物をRf+培地へ塗布することにより感染の有無を確かめた。その結果、103以上の共生細菌を与えた場合に100%の感染を安定して再現できることが明らかとなった。人工感染個体は正常な共生器官を有し、非感染個体に比べ体サイズが増加し、産卵前期間は短縮、産卵数が増加するなど、共生細菌感染による正の適応的効果が観察された。これら人工感染系の構築は従来のダイズ苗を用いた感染方法に比べ容易かつ迅速であり、今後の研究展開において重要な成果と言える。
|