2008 Fiscal Year Annual Research Report
ホソヘリカメムシにおける宿主-共生細菌間相互作用に関する研究
Project/Area Number |
06J01387
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
菊池 義智 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 生物機能工学研究部門, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 共生細菌 / 細菌 / 共生 / 進化 / カメムシ / バークホルデリア |
Research Abstract |
本研究は、ホソヘリカメムシ類において報告されている外界獲得型相利共生系(マメ科植物の根粒菌のように毎世代土壌環境中から相利共生細菌を獲得する系)を対象とし、遺伝子レベルでの宿主-共生細菌間相互作用の実態解明を行い、これを通して昆虫における細菌共生系の進化・維持機構の理解を目指している。昨年度までに確立した共生細菌の形質転換系・宿主への再感染系を用いて、3年計画の3年目はGFP(緑色蛍光タンパク)組換え体を用いた宿主体内における共生細菌感染動態の観察、およびTransposon random mutagenesisによる共生関連遺伝子群の大規模スクリーニングを行った。 <GFP組換え体による共生細菌体内動態の解明>これまでの研究から共生器官(消化管に発達する袋状組織[盲嚢])への共生細菌の感染は2齢期に起きることが明らかとなっている。今回、GFP組換え体を2齢脱皮直後に人工接種し、共生細菌の体内局在を経時的に観察することで共生細菌感染過程の解明を試みた。接種後24時間の観察から、共生細菌はまず盲嚢前部の膨大部に定着し、その後盲嚢へ徐々に感染することが明らかとなった。 <Transposon random mutagenesisによる共生関連遺伝子群の同定>細菌のバイオフィルム形成には運動性、基質への接着、細菌間相互作用に関わる遺伝子群が関与しており、それらは共生細菌の盲嚢内への侵入・定着、宿主細胞との相互作用にも関わっている可能性が高い。そこで、transposon random mutagenesisで得られた変異株をバイオフィルム形成の有無によりスクリーニングし、得られたバイオフィルム形成不全株についてホソヘリカメムシ盲嚢への感染能力を調査した。トランスポゾン変異株4250系統をスクリーニングし、22系統のバイオフィルム形成不全株を得た。これらをホソヘリカメムシへ感染させそれぞれの感染率を調査したところ、5株は全く盲嚢へ感染できないことが明らかとなった。これら感染不全株についてinverse PCRによりトランスポゾンの挿入遺伝子を解析したところ、多くが鞭毛形成に関わる遺伝子(fliA,fliC,flhF,MotBなど)であった。このことから、共生細菌の盲嚢への感染には運動性(鞭毛形成)が重要な役割を果たしていることが明らかとなった
|