2006 Fiscal Year Annual Research Report
「表面相互作用が機能性アミロイド線維伸長に及ぼす影響」
Project/Area Number |
06J01393
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
伴 匡人 独立行政法人産業技術総合研究所, セルエンジニアリング研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | アミロイド線維 / Amyloidβ(1-40) / 表面相互作用 / 生体膜 / 直接観察 / 全反射蛍光顕微鏡 / sperulite / アルツハイマー病 |
Research Abstract |
in vivoで形成されるAmyloidβ(Aβ)アミロイド線維は、in vitroで形成されるアミロイド線維とは異なり、放射状に伸長した形態を示す。生体内に於けるAβアミロイド線維形成には、糖質や脂質、共存蛋白質との相互作用が関連し、これらの因子との相互作用が線維の形態に影響を及ぼすと考えられる。またin vitroに於ける原子間力顕微鏡や蛍光顕微鏡観察の結果から、観察基板との相互作用が、線維の形態や伸長速度に影響を与えることが報告されている。しかしながら、表面相互作用のアミロイド線維伸長への影響については、体系的な研究例が少ないことから曖昧な点が多く残されている。今年度の研究では、疎水性相互作用と静電相互作用に注目し、これらの相互作用がAβ(1-40)アミロイド線維伸長に与える影響について調べた。研究は、主に表面特性の異なる石英基板上でのAβ(1-40)アミロイド線維伸長を全反射蛍光顕微鏡と蛍光色素ThTで観察することにより行った。観察の結果、Aβ(1-40)線維伸長は基板の表面特性に大きく依存することが解った。疎水性基板やプラス電荷を帯びた基板上では、線維伸長が阻害されたのに対し、マイナス電荷を帯びた基板上では、線維伸長が促進された。ポリマーを吸着させた基板表面で線維伸長が爆発的に促進された。より詳細な伸長機構を調べるために、リアルタイム観察を行ったところ、ポリマー表面での伸長は、石英表面とは異なり、溶液中から起こることが明らかになった。さらに共焦点レーザー走査顕微鏡観察の結果から、マイナス電荷を帯びた基板上で伸長した線維は、既に報告されているinsulinアミロイド線維から構成されるspherulite状のクラスターを形成することが明らかになった。このクラスター内に含まれる線維と石英基板上で伸長した線維を、伸長速度解析と電子顕微鏡観察で調べたところ、これらの線維が同一の線維であることが示唆された。またQCM測定より、マイナス電荷を持つ基板上でのモノマー及び線維の粘弾性が、他の基板上よりも低いことが分かった。以上の結果より、モノマー及びseedの基板への吸着の度合いが、アミロイド線維の形成及び伸長に大きく影響を与えることが示唆された。またspherulite様の線維の形態や大きさが、アルツハイマー病患者脳内に蓄積した老人班とよく似ていることから、spherulite様線維の形成機構を解明することにより、老人班の形成機構の理解が深まると考えられる。
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