2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J01498
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
井黒 忍 大谷大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 乾燥地 / 水利 / 灌漑システム / 農業技術 / モンゴル時代 / 集約農法 / 環境変動 |
Research Abstract |
区田法とは、耐旱・救荒を目的とする集約農法であり、その特徴は「区」と称される窪地を形成して作物を栽培し、集中的に施肥や灌水を行う点にある。傍地を耕さず、使用する土地を限定して深耕・密植を行い、多量の肥料を投与することで、痩せ地においても実施可能となる。さらに、こうした耕作方法により土壌水分の保持と土壌流出を防ぐ効果がある。その形状の違いから、溝種法と坎種法の2種に大別される。前者は帯状に、後者は方形に窪地を作るが、どちらも地表水や土壌水分を低地に集約し、効率的な水資源の利用を行うという基本的性格は変わらない。 区田法の集約的農法としての性格は、漢代における実施当初より旱魃や水害への対策として活かされるものであった。その後、区田法は金代において700年ぶりに政府の推進する農業政策として再実施された。また、モンゴル時代にも農業政策としての区田法実施という方法が継承され、全国的に拡大実施されることとなる。その背景には自然災害の頻発や環境の変化といった問題が存在していた。 復元されたモンゴル時代の区田方式は、あくまで区田法実施のために作られたモデルに過ぎない。しかし、その一方、これこそが様々な自然災害と生産力低下といった問題を打開すべく生み出された姿であり、そこには大元ウルス政府が意図した農業経営のスタイルが反映されていると考えられる。すなわち、井戸などの灌漑施設を備え、周囲を垣根で囲った土地に主穀を含む各種作物を混作し、人力をこれに注ぎ込むことによって、旱害や水害にも対応でき得る自立性の高い小農法経営というものである。但し、そこに説かれる過大な収量見込みや、あまりに精緻な混作方法などから考えて、その本来の意図が充分に果たされたとは考えにくい。
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Research Products
(4 results)