2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J01498
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
井黒 忍 Otani University, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 水利 / 環境適応 / 水利碑 / 汾河 / 中国山西省 / 清洪灘漑 / 乾燥地農業 / 水売買 |
Research Abstract |
2006年より2007年にかけて、汾河流域の水利碑刻調査を行った。その調査成果に基づき、特に金元時代の水利関連碑刻の現状と概略を示す。 中国国内において屈指の質・量をほこる山西省現存の碑刻資料については、既知の『山右石刻叢編』などの金石書や地方志に収録されるほか、石刻資料集が相次いで出版されることにより、格段に利用・参照の便が向上している。加えて、市区ごとに編纂された『三晋石刻総目』は、現時点での碑刻の存佚状況を伝えるだけではなく、従来の資料集に収録されることのなかったより幅広いテーマ・時代の碑刻情報を提示するという有効性を持つ。 これら資料集・碑刻目録を利用して行ってきた金元碑刻調査の知見として、山西省に現存する碑刻資料の特徴が他省に比して圧倒的な金元碑刻の多さにあり、さらに水利碑刻に関しても同様の特徴が見いだせる点が挙げられる。特に、主要な水利碑刻の集積地である各地の水利関連祠廟においては、金元時代にその最古の碑刻を求め得るものが多く、こうした特徴は汾河流域の八大泉水の事例からも見て取れる。さらに、近年、歴史学以外の分野からも注目を集める水利碑であるが、その利用の前提として水利碑とはいかなる資料であるのかという定義付けを改めて行う必要がある。その形態・内容・作用によって分類・整理し、水利碑の持つ資料としての性格と有効性を示す。中でも、水利碑が後世の水利用や社会にいかなる影響を与えたのかという点に着目することで、「記念碑monument」という一面には止まらない水利碑の「実用性」が浮かび上がる。
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Research Products
(7 results)