Research Abstract |
i-Al-Pd-Mn準結晶及び(1/1,2/1-)AIPdMnSi近似結晶に対して,単相試料の作製,熱電物性測定及び陽電子寿命測定により試料の評価を行った.熱電変換材料への応用を考えた場合,近似結晶相よりも準結晶相の方が高い性能指数を示したことから,i-Al-Pd-Mn準結晶の熱電物性の組成依性を検討した.その結果,Al_<71>Pd_<20>Mn_9という仕込み組成にて作製した試料が最も高い性能指数(ZT=0.18)を示した.この値はi-Al-Pd-Re系準結晶の値(ZT=0.08-0.10)を上回るものである.さらなる性能向上のために,「Weakly Bonded Rigid Heavy Clusters(WBRHCs)」の材料設計指針の下,クラスター内結合を強め,クラスター間の結合を弱めるために,III族元素めAl-Ga置換を行い,熱電物性を評価した.粉末X線回折測定の結果,Gaは4at.%まで置換可能であることが判明した.またA1-Ga元素置換により,有意に熱伝導率が減少し,結果として熱電性能指数は置換前の約1.4倍のZT=0.26を示した.この値は,準結晶・近似結晶の中で最も高い性能指数である.以上の結果を,日本熱電学会及び日本金属学会にて発表を行い,Applied Physics Lettersに投稿予定である. 陽電子寿命はこれまで多くの安定準結晶・近似結晶に対して行ってきたが,陽電子寿命の絶対値に関しては議論が難しかった.そこで,正20面体クラスターの中心がReで占有されていて構造型原子空孔のない1/0-Al_<12>Re近似結晶を作製し,陽電子寿命を測定した結果,正20面体クラスターの中心が空孔の1/1-AIReSi近似結晶と比較して約30ps短い寿命値を取った.得られた陽電子寿命,過去の測定結果及び純金属・半導体・金属間化合物の陽電子寿命を比較検討した結果,平均価電子濃度に対して良い依存性を示した.これにより,これまで不明瞭であった陽電子寿命の絶対値の違いを議論できるようになった.以上の結果を,Philosophical Magazineに投稿し,採録された.
|