2006 Fiscal Year Annual Research Report
10〜12世紀の中東におけるウラマーと地方史人名録編纂の社会史的研究
Project/Area Number |
06J01679
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Research Institution | The Toyo Bunko |
Principal Investigator |
森山 央朗 (財)東洋文庫, 研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中世史 / 社会史 / イスラーム世界 / ウラマー / ハディース / 人名録 / 伝記 / 書籍文化 |
Research Abstract |
10〜12世紀にかけて、地方史人名録と呼ばれる書物がイスラーム世界の全域で多数編纂された。本研究の目的は、地方史人名録が編纂当時にウラマーの学問的活動に果たした機能を分析し、ウラマーの知識をめぐる活動の社会的・文化的実態を解明することである。 平成18年度に取り組んだ課題は、【課題(1)】「地方史人名録編纂流行の地理的・歴史的展開の解明」と【課題(2)】「ウラマーの学問的活動における地方史人名録の位置の解明」であった。【課題(1)】の分析は5月中に完了し、編纂流行がウラマーの広域的な知識伝達ネットワークのなかで生起した現象であったことを実証した。この成果を、6月にアンマンで開かれた第2回中東学会世界大会(WOCMES2)において発表した。またこれに先立ち、5月に開催された歴史学研究会大会合同部会における研究報告として、【課題(1)】の成果に基づいてウラマーの知識の受容と利用を論じた。この発表の内容は、大会報告論文「ハディース学関連知識の受容と利用」として『歴史学研究』(820号)に掲載された。 8月中旬から9月下旬にかけて、トルコ共和国・スレイマニエ図書館において資料調査を行い、今後の研究に必要な写本資料を収集した。 10月からは、【課題(2)】の分析を進め、地方史人名録がハディースを用いた著述や論争の成果であり、また学問的活動の材料を流通させる媒体として重要な位置を占めていたことを明らかにした。この成果を基に、書物による知識の流通と旅を通した知識の探求との関係を論じ、「知識を求める移動:ハディース学者の旅の重要性の論理」として『歴史のなかの移動とネットワーク』(中野隆生編・桜井書店・印刷中)に寄稿した。 2月中旬から3月上旬にかけてダマスカスで補足的な資料調査を行い、研究材料の充実を図った。
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Research Products
(1 results)