2008 Fiscal Year Annual Research Report
10〜12世紀の中東におけるウラマーと地方史人名録編纂の社会史的研究
Project/Area Number |
06J01679
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Research Institution | The Toyo Bunko |
Principal Investigator |
森山 央朗 The Toyo Bunko, 研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中世史 / 社会史 / イスラーム世界 / イスラーム世界 / ハディース / 人名録 / 伝記 / 書籍文化 |
Research Abstract |
西暦10世紀から12世紀にかけて、地方史人名録と呼ばれる書物がイスラーム世界の全域で多数編纂された。本研究の目的は、地方史人名録がウラマーの学問的活動に果たした機能を分析し、ウラマーの学問的活動の実態を解明することである。具体的な分析事項として設定した4つの課題のうち平成20年度に実施したのは、【課題(4)】「地方史人名録編纂流行の社会的・文化的背景の検証」と研究全体のとりまとめである。前年度までの研究から、地方史人名録の編纂流行が、ハディース学者の学問的活動の中に成立した地方史人名録の編纂・流通・利用の連鎖構造を実態としていたことが明らかになっていた。従って、「地方史人名録編纂流行の社会的・文化的背景の検証」とは、上記の連鎖構造が、ハディース学者の学問的活動におけるどのような必要に支えられて成立・展開したのかを検証することである。 平成20年4月から8月にかけて【課題(4)】に取り組んだ結果、連鎖構造を支えた背景として次の3点が明らかになった。すなわち、(1)各地域をイスラーム世界の一部と見なすハディース学者の理念、(2)ハディースとその関連知識の流通を維持するというハディース学者の学問的必要、(3)より高い学問的評価を得ようとするハディース学者の野心である。9月から平成21年3月にかけては、本研究全体の総括を行った。そこから浮かび上がってきたのは、ウラマー、特にハディース学者が行っていた学問的活動の実態である。ハディース学者の学問的活動とは、ハディースと関連知識の流通・収集・利用の連環の中で、イスラーム的な理念と学問的必要、学問的野心の3つの要素を勘案しながら、知識を習得し業績を発表することで、学問的な評価を獲得することだったのである。このような、ハディース学者の学問的評価の獲得過程を明らかにした本研究の成果は、ウラマーの社会的権威の源泉を理解する上で重要な貢献を成すものである。
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Research Products
(3 results)