2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J01736
|
Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
山口 ひとみ 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | オートファジー / Group A Streptococcus / Small GTPase Rab7 / 隔離膜 |
Research Abstract |
オートファジーは、細胞質成分をリソソームに輸送し、分解する系であり、日常的な細胞の代謝回転や飢餓時のアミノ酸供給源として機能している。オートファジーは通常、飢餓時のアミノ酸確保や細胞の新陳代謝に働いているが、その分解対象は自身の細胞質成分にとどまらない。細胞のエンドサイトーシスによって取り込まれた病原性細菌Group A Streptococcus(GAS)は、オートファジーによって効率的に排除される。その過程では、GASを包み込んだ巨大なGASオートファゴソームが形成される。非免疫系の細胞に取り込まれたGASは、SLOという毒素を分泌して、エンドソームから細胞質へ侵入する。しかし、すぐにオートファゴソーム膜に包まれて分解を受ける。一方、オートファジー必須因子であるAtg5の遺伝子破壊細胞では、そのような構造体はできず、GASは細胞質で増殖する。 そこで、この新たに見つかったオートファジーの、巨大化のメカニズムを解明することを研究の目的と定めた。詳細な電子顕微鏡解析の結果、電子顕微鏡の3次元構築系により、GASを包み込む過程で、複数の隔離膜同士が融合することが示された。他方、通常のオートファジーでは、そのような現象は殆ど見られず、個々の隔離膜が閉じてオートファゴソームを形成する。この隔離膜同士の融合過程は、巨大なGASオートファゴソーム形成の要因と考えられる。 この隔離膜融合過程に、Small GTPase Rabタンパク質の一つRab7が必須の役割を担うことが明らかになった。この分子のGDP結合型constitutive inactive mutantタンパク質を細胞に強制発現すると、GASオートファゴソームの形成が著しく阻害された。しかしながら、そのような条件下に置いて、GAS近傍に隔離膜の形成は正常に起こることが、隔離膜マーカーGFP-Atg5を用いた実験から明らかになった。以上から、Rab7はGAS近傍に生じた複数の隔離膜同士が融合しあって一つの巨大なGASオートファゴソームを形成するのに働くことが強く示唆された。さらに、いったん形成されたGASオートファゴソームがホモタイピックな融合によって巨大化することが明らかになった。 以上の結果は、GASオートファゴソーム形成の、通常のオートファゴソーム過程との分子レベルでの相違を明らかにした。恐らくこの機構は、細胞内に侵入した細菌をやっつけるために多細胞生物が発達させた新しいメカニズムと言えるだろう。
|