2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J01738
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
伊藤 圭祐 総合研究大学院大学, 生命科学研究科遺伝学専攻, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 神経発生 / 細胞移動 / lot細胞 / セマフォリン / ニューロピリン / 軸索ガイダンス分子 / 先導突起 / K252a |
Research Abstract |
本研究の目的はlot細胞の移動を制御する分子を探索する事である。そこで候補分子のスクリーニングに着手し、40種類程度の分子の効果を調べた結果、FGF8とケモカイン・SDF1に誘引の傾向が、チロシンキナーゼ型受容体・EphB1に反発の傾向がある事が分かり、ある程度の候補分子を得る事に成功した。今後これらの分子の生体内での機能を調べていきたい。一方でcDNAライブラリーを使ったスクリーニングも試みたがこの方法は非常に労力を有する上リスクも大きく、断念する事にした。また申請者は、軸索ガイダンス分子・Sema3Fが培養系においてlot細胞に対し反発効果を持つ事を既に発見していたので、Seama3Fの受容体であるニューロピリン2の遺伝子破壊マウスを供与してもらい、その脳をlot細胞のマーカーでホールマウント染色した。lot細胞が脳表面上に作る細胞の配列には大きな異常は認められなかったが、lot細胞が脳の内側へ異所的に侵入している可能性を検討すると、まだ予備的な段階ではあるが確かにその傾向が見られた。今後も実験を進め、生体内での機能について解析する。 上記スクリーニングにおいては薬理実験も行い、その結果幾つかの薬剤がlot細胞の移動に影響を及ぼした。中でもK252aという薬剤に興味深い結果が得られた。普通移動中の神経細胞は先導突起という構造を細胞体から進行方向へ伸ばし、先導突起と細胞体が同期して移動する。しかしK252aを加えると細胞体の移動が抑えられる一方、先導突起の伸長はそのまま続いた。申請者はこの結果に関し「発生期の神経系における、細胞移動から軸索伸長への切り換えスイッチが何か」という問題に対して重要な手掛かりを与えてくれるのではと考えた。この研究により神経発生に関する新しい知見が期待できるので、今後この解析も平行して行う。
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