2006 Fiscal Year Annual Research Report
kai時計遺伝子によるシアノバクテリア概日振動メカニズムの数理的予測
Project/Area Number |
06J01748
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
今村 寿子 (滝川 寿子) 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 概日リズム / 生物振動 / シアノバクテリア / 数理生物学 / 数理モデル / 計算機シミュレーション |
Research Abstract |
シアノバクテリアの概日リズムを司る時計タンパク質KaiCは概日周期に従ってリン酸化・脱リン酸化を繰り返す。KaiA、KaiBはKaiCリン酸化を調節しており、概日周期に伴いKaiCと複合体を成す。KaiCはリン酸化状態に依存して自身の発現を調節することが示唆されており、この転写制御機構について、数理的解析からリン酸化KaiCが発現を誘導していると予測した研究をJournal of Theoretical Biology誌に発表した。 KaiCのリン酸化振動は、KaiA、KaiBの共存下、in vitroで再構成できることが明らかになっている。本年度はこのKaiCリン酸化発振機構を数理的に解析した。 KaiAはKaiCのリン酸化を促す。KaiCはリン酸化が進むにつれて、KaiAと複合体を成すことが観察されている。したがって、複合体形成により遊離KaiAが減少することで、KaiCリン酸化に負のフィードバックが働き、振動を生み出している可能性がある。しかしシミュレーションを行った結果、既知の相互作用を取り込んだ4変数モデルは、振動を示さないことがわかった。 そこで制御構造に依る一般的な性質を解析するために、ある分子が全体の量を保ったまま、複数の状態を順番に遷移する系を考えた。このような閉鎖系で各状態の濃度が振動するには、状態間のフィードバックが必要であり、フィードバックを受ける反応と与える因子は、一定の状態数以上離れている必要があるとわかった。 この結果を基に、改良版モデルによってKaiCのリン酸化振動を解析した。その結果、KaiCは振動の際に5つ以上の異なる状態を経る必要があることがわかった。またKaiCがリン酸化された後、KaiAとの複合体を形成する前に別のリン酸化状態が存在すると示唆された。本研究はJournal of Biological Rhythms誌に発表した。
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Research Products
(2 results)