2007 Fiscal Year Annual Research Report
初期近代西欧の建築・庭園空間における百科全書的知識の表象と記憶術的空間構成の原理
Project/Area Number |
06J01965
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
桑木野 幸司 Chiba University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | Agostino Del Riccio / ルネサンス庭園 / 百科全書主義 / 記憶術 / イタリア / 庭園史 / フィレンツェ / ドミニコ会 |
Research Abstract |
本年度は、イタリアに長期滞在し、ピサ大学のLucia Tongiorgi Tomasi教授(美術史)およびフィレンツェ大学のDaniela Lamberini教授(建築史)と共同で、16世紀の園芸論の研究を行った。研究対象となる資料は、16世紀後半のフィレンツェで活躍したドミニコ会修道僧Agostino Del Riccio (1541-98)が執筆した『Agricultura sperimentale』(経験的農業論)および『Agricultura teorica』(理論的農業論)(Firenze, 1592-1596)である。 同著作は、当時の園芸芸術の知識を集大成した百科全書であるとともに、それらの知識を組み合わせて、理想的な庭園の計画が描かれている点で、16世紀の庭園・建築史において非常に重要な資料である。 本年度は、手稿の形式でフィレンツェ国立中央図書館に所蔵されているこの資料(全3巻・合計1400ページあまり)を直接参照しながら、本文をすべてパソコンによって書き写し、厳密なテクストクリティークと詳注をほどこして、出版の準備をすすめた。予定では、2009年度以降に、フィレンツェのOlschki社より出版される予定である。 分析の過程で、Del Riccioによる理想庭園構想が、同時代の記憶術や百科全書主義といった思潮に深く根ざしたものであることがわかり、当時の庭園空間における百科全書的知識の表象と記憶術的空間構成の原理をさぐるうえで、貴重な分析事例となった。 ただし本年度は、イタリアに滞在し、資料の筆写を中心とする文献学的作業に、研究時間のほぼすべてを費やすこととなったため、最終的な分析結果の発表は、来年度以降に繰り越しておこなう予定である。具体的には、手稿資料を出版する際の巻頭論文として、本研究の成果をイタリア語にて発表するとともに、科学史雑誌『Nuncius』(Olschki社)への投稿を行う。
|