2007 Fiscal Year Annual Research Report
生体内におけるセレン代謝機構の解明:分析法の開発と生物学的応用
Project/Area Number |
06J01979
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
阿南 弥寿美 Chiba University, 大学院・薬学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | セレン / 母仔間移行 / 胎仔 / 新生仔 / セレノメチオニン / 無機セレン化合物 |
Research Abstract |
セレンの母仔間移行に関する研究はこれまでも多数報告されてきたが、妊娠または授乳期間における複数のセレン化合物の移行を定量的に比較した例は少ない。当研究グループでは、これまでに安定同位体を標識とした新しい分析法を確立し、様々なセレン化合物について生体内利用や代謝の経路を明らかにしてきた。そこで本年度はまず、それぞれ異なるセレン安定同位体でラベルされた適正量のセレン化合物(セレン酸、亜セレン酸、セレノメチオニン)をラットに同時投与し、妊娠および授乳期におけるセレン化合物の母仔間移行を直接比較した。その結果、母親の組織中総セレン濃度に対する3種のセレン化合物由来のセレンの割合は非妊娠、妊娠、授乳の各群間でほぼ同じであり、母親体内における3種のセレン化合物の利用能は生殖段階に影響されないことが示唆された。胎仔肝臓では3種のセレン化合物が同程度移行していたが、一方、新生仔の胃内容物および肝臓中の無機セレン化合物(セレン酸、亜セレン酸)に由来するセレンはセレノメチオニン由来のセレンに比べ低値であった。従って、無機セレン化合物は母乳を介しての移行が少なく、有機セレン源であるセレノメチオニンが選択的に母乳中に利用されることが明らかとなった。この成果は2007年11月に名古屋で開催された国際メタロミクスシンポジウムで発表した。また、濃度依存的な移行能の差異を明らかにするために、適正用量と高用量のセレンを投与したところ、高用量投与群ではセレノメチオニンが選択的に胎仔に移行し、有機セレン源の濃度依存的な選択移行が明らかになった。
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Research Products
(4 results)