Research Abstract |
ソニックヘッジホッグ(Shh)シグナル伝達系は,胚での形態形成に必須であるが,近年,すい臓癌細胞を含む多種の腫瘍細胞で異常亢進が報告されている.本研究では,この異常亢進したシグナル伝達系を阻害することで,腫瘍の拡大を阻止できるものと考え,天然未利用資源より亢進したShhシグナル伝達系を阻害する化合物を探索することを目的とし,以下の実験を行った. 1.アッセイ系の構築 Shhシグナル伝達系の最下流において,転写因子GLI1がDNA結合領域に結合し,転写を活性化することが報告されている.その下流には,bcl-2,cyclin DおよびEなどが存在し,アポトーシスや細胞周期を制御している.本研究では,GLI1の転写部位に着目し,GLI1による転写活性を阻害する化合物を探索することを目的とし,12個のGLI結合領域とTKプロモーターを有し,その下流にルシフェラーゼ遺伝子がコードされたレポーターベクターを作成した.作成したベクターを,テトラサイクリン(Tc)によって転写活性化因子GLI1が発現するtetracycline-regulated HaCaT細胞にトランスフェクションし,目的のアッセイ系を樹立した. 構築したアッセイ系にて,Tcの添加時期,サンプルの処理時間,ルシフェラーゼ活性の測定時期などの検討を行い,スクリーニングに最適なプロトコールを得た. 2.本研究室所有の化合物ライブラリーの評価 1.で樹立したアッセイ系を用いて,本研究室保有の92種の天然由来化合物(フラボノイド,ビスインドール,テルペノイド等)をスクリーニングにかけた結果,ビスインドール化合物(arcyriaflavinC, staurosporinone)およびセスキテルペン化合物(zerumbone, zerumbone epoxide)がGLI1転写阻害活性をもつことを見出した.
|