2006 Fiscal Year Annual Research Report
115化合物の純良単結晶育成と圧力誘起超伝導の研究
Project/Area Number |
06J02225
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宍戸 寛明 京都大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 異方的超伝導 / 重い電子系 / 中性子回折 |
Research Abstract |
Ce原子は4f軌道に電子を1個もちf軌道の大きな軌道角運動量を反映した大きな磁気モーメントをもつ.4f電子には伝導電子との相互作用により,長距離磁気秩序を安定化させるRKKY相互作用と伝導電子が磁気モーメントを遮蔽し,磁気秩序を消失させる近藤効果が同時に働いている.Ce化合物ではRKKY相互作用と近藤効果の競合により磁気秩序状態からフェルミ液体状態まで様々な基底状態をとる.特に基底状態として異方的超伝導を示すCe, U化合物は重い電子系の超伝導体と呼ばれ,盛んに研究が行われている.CeCoIn_5はそのような重い電子系超伝導体の一種であり,Ce系重い電子超伝導体としてはもっとも高い超伝導転移温度T_c=2.3Kを示す.他の重い電子系超伝導体と際立って異なる重要な特徴は2枚の主要フェルミ面が凹凸を持った円柱状フェルミ面であることであり,他の重い電子系超伝導体が3次元的であるのに対し擬2次元的になっていることである.同じ結晶構造をもつCeRhIn_5は常圧で反強磁性体であり,圧力下で超伝導を発現する.CoをRhで置換したCeRh_<1-x>Co_xIn_5はRhからCoへ移り変わるとともに磁気秩序状態が消失し,超伝導が現れる.中間の濃度では磁気秩序と超伝導の共存がおきる.CeRh_<1-x>Co_xIn_5の純良単結晶育成を行い,電気抵抗,比熱,磁化率測定から相図を,御茶ノ水女子大学 古川研と共同で中性子回折の実験を行い,磁気構造を決定した.比熱測定からx=0.2では0.6K以上で超伝導転移は確認できないが,x=0.3では突然T_c=1.2Kの超伝導が現れる.このとき磁気構造は,超伝導と共存しない領域ではq=(1/2,1/2,0.297)の非整合反強磁性に,超伝導と共存する領域ではq=(1/2,1/2,1/2)の整合反強磁性になっていることを中性子散乱実験から明らかにした.これらの結果から,1)フェルミ面上の整合反強磁性により消失する領域は超伝導に対してほとんど寄与がないため,整合反強磁性は超伝導と共存できるが,2)フェルミ面上の非整合反強磁性により消失する領域が超伝導に対して重要な寄与を持っており,超伝導は消失すると推察した.この結果は論文にまとめられ,現在投稿中である.
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Research Products
(1 results)