2006 Fiscal Year Annual Research Report
原始惑星系円盤におけるダストの力学的・熱力学的進化の解明
Project/Area Number |
06J02229
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三浦 均 京都大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 原始太陽系星雲 / 衝撃波 / ダスト加熱現象 / コンドリュール / 三次元形状 / 数値流体計算 |
Research Abstract |
平成18年度は主に、私が独自に開発した三次元数値流体シミュレーションコードを用いて、原始太陽系星雲内部において希薄高速ガス流にさらされて加熱・融解した珪酸塩ダストが経験する再固化直前の変形について調べた。近年、隕石中に含まれるコンドリュールの三次元形状がX線マイクロトモグラフィによって調べつつある。それによると、多くのコンドリュールはほぼ真球の形状を示すが、いくつかのコンドリュールはプロレート形状(ラグビーボール型)を示すことがわかった。私は、回転しながら希薄高速ガス流にさらされた融解ダストがこのようなラグビーボール状に変形するという仮説を提唱し、三次元数値流体シミュレーションによってその仮説を検証した。それによると、衝撃波加熱コンドリュール形成モデルから推定されるガス動圧やダスト回転速度などを考慮すると、融解ダスト形状がプロレート形状になることが示された。さらに、その変形の大きさについても、実際に測定されたプロレート形状のコンドリュールと比較して、定量的にほぼ一致する結果が得られた。この結果は、原始太陽系星雲内部において、惑星形成が進行しつつある段階で衝撃波が発生し、それによってこのようなプロレートコンドリュールが形成されたということを強く示唆する。さらに、融解ダストの形状は衝撃波条件(ガス密度や衝撃波伝播速度)に依存するため、コンドリュール形状を再現するための衝撃波発生メカニズムに制限を与えることができる。今後、この結果を論文雑誌に投稿し、研究成果を世界的に公表する予定である。また、今後の研究の方針として、コンドリュールを形成しうる衝撃波が発生した場合のダスト熱的進化(蒸発、再凝縮)に注目した研究を展開していく予定である。そのような熱的進化の痕跡は、今後稼動していく次世代大型観測装置などで観測的に実証できる可能性があり、これは原始惑星系円盤内部のダスト進化シナリオに大きな影響を与えうると期待できる。
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