2007 Fiscal Year Annual Research Report
訪花性昆虫における赤受容型視物質の分光学的・分子進化学的解析
Project/Area Number |
06J02269
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
若桑 基博 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 昆虫 / 視物質 |
Research Abstract |
昆虫視物質の試験管内再構成法を確立することを目的として、アゲハ視物質(PxUV,PxB,PxL1,PxL2,PxL3)、モンシロチョウ視物質(PrUV,PrB,PrV,PrL)の培養細胞系における発現を試みた。まず、それぞれの遺伝子をPCRにより増幅した。この際、発現タンパク質精製のためにC末端にウシロドプシンの単クローン抗体(rho 1D4)のエピトープタグを付加した。増幅した遺伝子断片は、発現ベクターpcDNA3.1、SRα、pEFにそれぞれ組み込んだ。発現ベクターをリン酸カルシウム法によりHEK293細胞にトランスフェクションし、2日間培養した。細胞回収後、暗中で発色団11-cis retinalを加え視物質として再構成した後に、界面活性剤で発現蛋白質を含む膜分画を抽出した。これを細胞粗抽出液とし、その吸収スペクトルを分光光度計にて測定した。その結果、PrBとPrVの再構成を確認することができた。差吸収スペクトルから、PrB、PrVは青色光を照射することにより、吸収極大が長波長シフトした光産物を生じ、これに緑色光を照射すると元の視物質が光再生することが分かった。この反応は可逆的であり、PrB、PrVはショウジョウバエなどの視物質と同様なbistable pigmentであることが示唆された。次に吸収スペクトルの詳細な解析を行うため、発現蛋白質をrho 1D4ビーズを用い精製し、その吸収スペクトルを測定した。その結果、PrBとPrVはそれぞれ450nm、410nmに吸収極大を持つことが明らかになった。電気生理学的実験から予測されているPrB、PrVの吸収極大波長はそれぞれ453nm、425nmである。PrBは予測と良く一致したが、PrVは15nmの開きがあった。この差が何に起因するものか現時点では明確に説明できない。これまでの実験では、再構成に11-cis retinal(A1)を用いた。ところが実際は、モンシロチョウの生体内における視物質の発色団は11-cis 3-OH retinal(A3)である。ウシロドプシンを用いた実験では、異なる発色団(A1またはA3)を使用することにより、吸収極大波長に12nmの差が生じることが知られている。モンシロチョウ視物質でも発色団による吸収極大の変化が起こるか確認するために、今後A3を用いた再構成実験を早急に行う予定である。
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Research Products
(2 results)