2008 Fiscal Year Annual Research Report
訪花性昆虫における赤受容型視物質の分光学的・分子進化学的解析
Project/Area Number |
06J02269
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
若桑 基博 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 視物質 / 色覚 / 訪花性昆虫 |
Research Abstract |
昆虫視物質の試験管内再構成法を確立することを目的に、アゲハ、モンシロチョウの視物質の培養細胞系における発現を試みた。その結果、モンシロチョウPrBとPrVの再構成を確認できた。差吸収スペクトルから、PrB、PrVは青色光を照射することにより、吸収極大が長波長シフトした光産物を生じ、これに緑色光を照射すると元の視物質が光再生された。この反応は可逆的で、PrB、PrVはbistable pigmentであることが示唆された。次に吸収スペクトルの詳細な解析のため、大量発現後、発現蛋白質の精製を行ない、吸収スペクトルを測定した。その結果、PrBとPrVはそれぞれ450nm、420nm付近に吸収極大を持つことがわかった。さらに精確な吸収極大波長を明らかにするために、ヒドロキシルアミン存在下で光照射、加えて、Govardovskiiのノモグラムを用いて作成した様々な視物質の吸収スペクトルとのフィッティングにより、吸収極大波長を推定した。その結果、PrB、PrVの吸収極大はそれぞれ447nm、420nmであることが分かった。電気生理学的実験から予測されているPrB、PrVの吸収極大波長はそれぞれ453nm、425nmであり、予測と実測とが良く一致した。私はこれまでに、雄モンシロチョウでPrVを発現する紫受容細胞の分光感度生成には、420nm付近の光を吸収するフィルターが重要であることを示唆していた。今回、PrVの実測スペクトルが得られたことにより、これを実験的に証明することができた。モンシロチョウとおなじシロチョウ科に属するモンキチョウの視物質に関する研究にも参加した。モンキチョウでも2つの青視物質(CeV1、CeV2)が見つかり、青視物質の重複はシロチョウ科の特徴と考えられる。しかしCeV1、CeV2は共にモンシロチョウの紫型PrVのオーソログであり、PrBに対応するものは見つからなかった。インサイチュ・ハイブリダイゼーションの結果、この2つは常に重複して発現しており、この点でもモンシロチョウとは著しく異なることが分かった。本研究で確立することができた昆虫視物質の試験管内再構成法をCeV1とCeV2に応用して両者の吸収スペクトルを得ることで、シロチョウ科における色覚系の進化に関して新しい知見が得られると期待される。
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Research Products
(4 results)