2007 Fiscal Year Annual Research Report
巨大クラスターイオン衝撃による極端環境場を利用した超高感度材料分析
Project/Area Number |
06J02328
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
二宮 啓 Kyoto University, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 質量分析 / クラスター / 二次イオン |
Research Abstract |
二次イオン質量分析法(SIMS)は重要な表面分析手法の一つであるが、近年、半導体や金属材料においては表面局所分析の感度向上や数ナノメートルオーダの深さ方向分解能が要求され、また有機無機の混在する多層膜や生体組織中の生体高分子においては、分子を破壊することなく高感度で分析することも求められている。しかし既存のSIMS装置で使われている単原子や二原子分子のイオンビームを用いる限り、性能向上は原理的に極めて困難である。本研究ではそれらの現状を打破する手段として入射イオンのサイズが数100以上の巨大クラスターイオンをプローブとして用いることを提唱している。第2年度目の研究においてはまず、二次イオン発生部の残留ガスが二次イオン生成に及ぼす影響を排除することを目的として、超高真空下で入射イオンを試料へ照射できる装置を構築した。これにより試料の清浄表面からの二次イオンを測定できるようになり、詳細な二次イオン生成機構の議論が可能となった。また超高真空条件から徐々に酸素分圧を増加させていくときの二次イオン種や二次イオン収率を測定することにより、酸素分圧が二次イオン生成過程に及ぼす影響についても明らかにした。一方アミノ酸、複数のアミノ酸からなるペプチド、有機EL素子の材料となるポリマー等の有機材料の分析においては、入射する巨大クラスターイオンのエネルギーとサイズを最適化することにより、試料が損傷していることを示す分解片イオンの収量を抑制しつつ、有機高分子の検出感度を大幅に向上することに成功した。これらの結果から入射するクラスターイオンのサイズやエネルギーを最適化することは様々な有機物材料を分析する上で極めて重要であるということを明らかにした。
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