2006 Fiscal Year Annual Research Report
人獣共通感染症の制御のための社会システム設計に関する経済学的研究
Project/Area Number |
06J02347
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 道利 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 鳥インフルエンザ / フードシステム / 鶏卵 / 産業組織 / 経営学 / 人獣共通感染症 / インセンティブ |
Research Abstract |
1.おもに採卵養鶏場を対象に、高病原性鳥インフルエンザ発生当時(山口、京都、茨城、岡山)の制度的状況をまとめ、公的な制度と私的な損失軽減策との補完的な役割分担のありかたについて分析した。鶏卵の商取引の中で発生する損失を最小限に抑えることは、公的な鳥インフルエンザ防疫システムへの現場の賛同と協力を得るうえで重要だが、取引(商権)の喪失による損失については公的な補償が難しいと思われ、生産者グループや業界レベルでの民間による損失軽減策が必要となる。その際重要となるのは品質の標準規格化など、緊急時に同質の鶏卵を調達できるような仕組みである。この成果については平成18年度ヒューマンセキュリティ・サイエンス学会第2回研究大会にて報告を行っており、現在論文投稿中である。2.鶏卵フードシステムの連鎖構造と競争構造について、各レベルの事業者を対象にヒアリング調査を行った。次年度の計画を先取りして、鳥インフルエンザ発生時の疫病まん延防止対策(移動制限など)による事業者の損失軽減のための私的な取り組みである、鶏卵セーフティネットの事例調査を行い、その成立要因と課題について整理した。この成果については平成18年度日本農業経済学会大会において個別報告を行っており、現在論文投稿中である。3.動物衛生研究所予防疫学研究チームとディスカッションを行い、いくつかの家畜伝染病について生産者の経済的行動誘因に着目した疫病対策の経済評価を実施することについて、次年度以降も協力してその可能性を模索することとした。4.本年度計画にあった鶏卵・鶏肉の需給モデルの推計については、モデル上の瑕疵(競争市場モデルの仮定、非定常時系列データの扱い)および各流通段階でのデータ未整備により、計画は現段階では達成できていない。引き続きデータ収集とモデルビルディングを並行して行い、すみやかに計画を達成したい。
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