2008 Fiscal Year Annual Research Report
人獣共通感染症の制御のための社会システム設計に関する経済学的研究
Project/Area Number |
06J02347
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 道利 Kyoto University, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 鳥インフルエンザ / フードシステム / 鶏卵 / 産業組織 / 経営学 / 人獣共通感染症 / インセンティブ |
Research Abstract |
鶏卵フードシステムの構造論的把握のため、国内では関連主体への聞き取り調査並びに資料収集を、また、米国においては鶏卵・鶏肉フードチェーンにおける防疫プログラムに関すヒアリング調査をおこない、オランダについてはインターネットおよびオランダ農務省より鳥インフルエンザ発生当時の鶏卵フードチェーンに関する資料を得た。次年度この3ヵ国の構造比較によって鳥インフルエンザ防疫システム設計とフードシステムの相互関係を明らかにする予定である。米国では参加型の防疫プログラムが整備されていたが、このことに米国特有の生産段階における企業集中度の高さやそれにともなう資本集中がどのように影響しているかについては次年度の検討課題とする。オランダでは2003年の鳥インフルエンザ発生以降、隣国ベルギーからの鶏卵輸入が倍増しその後も減少していない。一方最大の輸出相手国であるドイツのオランダ産鶏卵に対する需要は比較的短期間のうちに回復し、この点に関して大きな風評被害は見られていない。日本では2004年に生産調整の主体が民間に移行して以来、特に関東地方での採卵鶏の増羽が著しく、2005年に茨城県で弱毒性の高病原性鳥インフルエンザが大発生した際には激しい競争にともなう商権喪失が広くみられた。以上の事実を踏まえ、オランダにおける鳥インフルエンザ防疫と鶏卵流通システムの相互関係について次年度も引き続き調査することで、日本においても激しい競争下で風評被害を軽減させるための事前の仕組みづくりに示唆を与えることができると思われる。本年度のもう一つの課題であった契約理論を援用した鶏卵取引のモデル化については、関係的契約の概念を援用し、鳥インフルエンザ発生時に経済損失を最小化するための取組の評価をおこなった。この草稿に基づいて現業者ならびに受入教官との議論を重ねており、次年度早々に論文を投稿する予定である。
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