2009 Fiscal Year Annual Research Report
人獣共通感染症の制御のための社会システム設計に関する経済学的研究
Project/Area Number |
06J02347
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 道利 Kyoto University, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 鳥インフルエンザ / フードシステム / 鶏卵 / 産業組織 / 経営学 / 人獣共通感染症 / インセンティブ |
Research Abstract |
本研究の第1の目的である、獣医疫学分野でおこなわれている人獣共通感染症およびその対策の「経済評価」に経済理論を正しく反映させることに関して、これまで主に獣医分野で行われてきたわが国における家畜疾病による経済損失評価を理論的に再検討し、第27回獣医疫学会学術集会において一般講演を行った(共同報告者、細野ひろみ(京都大学))。この内容の抄録は獣医疫学雑誌第13巻1号に「家畜疾病による損失の経済評価理論再考」として掲載された。本報告では主体間の損失・費用の分担を具体的に明らかにするには至らなかったが、市場供給量を変動させうる疾病対策に関しても市場価格変動が考慮されていない現状を指摘し、主体間の相互作用による損失評価額の変動を考察した。本研究の第2の目的のうち、インフォーマルな取引形態が人獣共通感染症のコントロールに果たす役割を比較・評価することに関して、前年度より修整を重ねていた鶏卵の継続的取引に関する論文を日本フードシステム学会に投稿した(却下され,現在再投稿準備中)。加えて、これまで研究されてこなかった商系の鶏卵取引のうち、とくに1970年以降の総合商社直営農場の推移について調査をおこない、日本農業経営学会大会にて報告した。さらに、2003年にオランダで発生した高病原性鳥インフルエンザの大流行を事例として、その防あつ後直ちに生産・輸出が回復している点に防疫措置に関する経済損失最小化のヒントがあると考え、現地調査(オランダ、ドイツ)を行った。オランダでは、産官学が連携して採卵鶏の代替的飼養への転換に必要となるノウハウの蓄積を行っており、そのことが非公的セクターによる自発的な取引維持を助け、翻って公的セクターのイニシアチブによる防疫活動をスムーズなものとしていた。本調査結果は、特別研究員採用期間終了後に開催された地域農林経済学会大会において報告した。
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Research Products
(6 results)