2008 Fiscal Year Annual Research Report
個体レベルでのMAPキナーゼカスケードを介した酸化ストレス応答機構の全容解明
Project/Area Number |
06J02415
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 英樹 Kyoto University, 生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | MAPキナーゼ / 酸化ストレス / シグナル伝達 |
Research Abstract |
本研究は、線虫(C.elegans)をモデル動物としてMAPキナーゼカスケードを介した酸化ストレス応答機構の全容解明を目指している。前年度までの研究計画に基づき変異体スクリーニングによって得られたafd-1 Mos1トランスポゾン挿入変異体の解析を行った。afd-1は哺乳動物で細胞接着に関与するアファディン(Afadin)の線虫ホモログである。この挿入変異体に酸化ストレスを与えた場合、線虫p38 MAPキナーゼ,PMK-1の過剰な活性化が生じ、酸化ストレス耐性が上昇した。これらの結果はafd-1遺伝子のRNA干渉(RNAi)でも観察された。この結果から、afd-1が酸化ストレス応答に関与することが明らかになった。以上の結果から、アファディンの線虫ホモログAFD-1を介し、酸化ストレス応答時のp38 MAPキナーゼ活性化を負に制御する新たな機構があることが示唆された。本研究により酸化ストレス応答におけるMAPキナーゼカスケードシグナル伝達経路の上流部分の機構解明に貢献することが期待される。また、本研究課題に加え、線虫の雄と雌雄同体と比較して酸化ストレスに非常に強い感受性を示すことを見出した件について引き続き解析を行った。その結果、線虫の雄の発生に必要な性決定シグナルの標的遺伝子のうち、MAB-3が雄の酸化ストレス耐性に強く関与することを見出した。さらに、MAB-3が線虫の腸に必要な転写因子、ELT-2によって転写を正に制御される標的遺伝子群の転写を抑制することを見出した。また、elt-2遺伝子をRNAiによりノックダウンした結果、酸化ストレス感受性が著しく増すことを見出した。これらの結果から、性決定遺伝子が体制的な性発生を制御するとともに細胞レベルの性差を制御することを明らかにした。
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