2006 Fiscal Year Annual Research Report
古典主義の運命とその政治的賭け金-フランス革命期から第三共和制まで
Project/Area Number |
06J02444
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
片岡 大右 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | シャトーブリアン / 古典主義 / ロマン主義 / 植民地主義 |
Research Abstract |
主としてフランス革命期から王政復古期までに著されたテクスト、および関連研究書、研究論文の読解に従事した。著作家としては、ラ・アルプ、『デカード』誌に拠った観念学者たち、およびシャトーブリアンとその世代、すなわちM.J.シェニエ、スタール夫人、コンスタン、ジューベール、バランシュなどを対象とし、革命期から王政復古期にかけての古典主義と政治をめぐる複雑な状況を跡付けることに努めた。またその一方で、10月に岡山市にて開催された日本フランス語フランス文学会全国大会において、本研究において重要な位置を占めるシャトーブリアンについての発表を行う機会を得た(「キリスト教と奴隷制シャトーブリアン『キリスト教精髄』を中心に」、10月28日、岡山大学)。イベリア半島の再キリスト教化(レコンキスタ)の完了と新大陸の発見=征服(コンキスタ)の開始の年である1492年以降、ヨーロッパ世界は新大陸の「野生人」および奴隷労働力としての黒人に対し、現実的な支配の制度を整備する一方で、そのような支配を正当化する論理を練り上げてきた。時代状況に応じて様々に変化するこの表象のシステムは、やがて西洋列強の植民地主義を支える文化的基盤として機能することになる。15世紀末から20世紀に至るまで展開されてきたこの人類学的思考は、しばしばロマン主義と結び付けて論じられる「よき野生人」のトポスを想起すれば足るように、フランス革命期から第三共和制すなわちフランス植民地帝国の時代にかけて、古典主義とロマン主義をめぐる議論と密接に結びついていた。このような問題関心を背景として、本発表が取り組んだのは、アメリカ大陸における二つの非ヨーロッパ人集団、すなわち先住民である「インディアン」諸部族とアフリカから奴隷として導入された黒人たちに対するシャトーブリアンの立場の提示と、それが持つ歴史的意義の解明である。
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