2007 Fiscal Year Annual Research Report
古典主義の運命とその政治的賭け金-フランス革命期から第三共和制まで
Project/Area Number |
06J02444
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
片岡 大右 Kyoto University, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | ロマン主義 / 古典主義 / シャトーブリアン / 植民地主義 |
Research Abstract |
復古王政期の後半から19世紀末にかけて著されたテクスト、および関連研究書、研究論文の読解に従事した。とりわけ重点的に取り組まれたのは、第一に、ギゾー、オーギュスタン・ティエリらロマン主義時代の歴史家の仕事を、シャトーブリアンを含む先行諸世代のフランス史記述との関係で理解すること、第二に、19世紀後半以降のフランスの知的風土に大いに縁深いフリードリヒ・ニーチェの仕事の政治的含意を、古典主義とロマン主義をめぐる同時代から20世紀初頭にかけての了解との関連を踏まえつつ解明することである。公表された業績としては、前年度の日本フランス語フランス文学会における学会発表に基づく仏語論文がある。表題を日本語訳するなら「シャトーブリアン、アメリカ野生人と黒人奴隷」となるこの論文においては、本研究において重要な位置を占めるこの作家においてアメリカ先住民と奴隷労働力として〈新世界〉に導入された黒人たちがどのように提示されているかが、同時代の歴史的文脈の中で詳論された。ここで取り上げられた二つの形象は、ヨーロッパが次第に練り上げていく「文明」の理念の関数としての重要性を持っている。しばしばロマン主義と結び付けて語られる〈よき野生人〉のトポスを想起すれば足りるように、フランス革命期から第三共和制すなわちフランス植民地帝国の時代にかけて、ヨーロッパ文明の外部に属する人民の表象は、古典主義とロマン主義をめぐる議論と密接に結び付いていた。シャトーブリアンの事例に即しての本論文における検討は、こうした問題へのより広範な取り組みのための準備作業となるだろう。
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