2007 Fiscal Year Annual Research Report
中国古代の民衆支配の法理念-法制用語における「亡」の概念を中心として-
Project/Area Number |
06J02449
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 季子 (保科 季子) Kyoto University, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中国 / 古代 / 亡命 / 出土史料 / 支配理念 / 秦漢 |
Research Abstract |
本年度の最大の成果は、「亡命」は戸籍離脱を意味するのではなく、「命」が罪名を確定する司法手続きであることを明らかにした論文、「亡命小考:兼論秦漢的確定罪名手績"命"」を中国の学術誌『簡帛』に発表することができたことである。この雑誌は、武漢大学の簡帛研究中心が主宰し、簡牘研究では実績がある。法制用語の翻訳にやや不安があり、翻訳者の力を借りたが、査読の上、無事採用となり、遠からず発刊されるはずである。査読者からは有意義なコメントをもらうことができた。中国や台湾、さらに欧米の研究者からの反応を、次年度の研究に生かしていきたい。 その上で、昨年の成果を踏まえて、「秦漢時代の名数と自占」の口頭発表を行った。新出出土史料、とくに随州孔家披漢墓出土の「告地書」等の地下文書(冥界文書)を利用し、秦漢時代の「名数」(戸籍)の移動について考察を行い、さらに「自占」(自ら申告して戸籍に登記すること)の用例を収集して、秦漢時代の戸籍制度の運用の一端を明らかにした。発表に対するコメント等を生かして、論文として公表すべく準備中である。 そのほか、「儒教国教化論争をめぐる諸問題」というテーマで、『歴史評論』誌より依頼を受けた。現在研究している支配理念の問題とも切り離すことができない問題である。『歴史評論』誌の購読者は、多くが西洋史や日本史の研究者であり、東洋史以外の研究者にこの問題、ひいては中国古代の支配理念の研究状況を広く紹介できるまたとない機会と考え、執筆を引き受けた。すでに投稿し、掲載も決定している。
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Research Products
(2 results)