2006 Fiscal Year Annual Research Report
戦後繊維産業界における多角的経営戦略-繊維からレンズ・薬品への多角的展開-
Project/Area Number |
06J02455
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋口 勝利 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 多角的事業展開 / 繊維産業 / 紡績業 / 産地綿織物業 / 下請制 / 戦前期日本経済 |
Research Abstract |
本研究の目的は、戦前期から日本経済の主要な地位を占めた繊維産業が、戦後復興期の中でいかなる多角的事業展開を実現させたかについて、紡績会社K社を事例に検討することである。以上の目的を満たすにあたり、紡績会社K社の戦前期における資本蓄積過程について検討した。K社は、戦前期に名古屋有力綿糸布商として、知多や三河、遠州など綿織物産地の機業家の多くを、賃織工場として組織していた。加えて第一次大戦期に、自ら紡績工場や、織布工場、サイジング工場を設立して、紡織を兼営する生産者としての性格をも有していた。 以上の特徴を有するK社の事業展開と、中京地域の産地綿織物業発展とは密接に関連している。事実、K社は、中京地域の中小織布業者を賃織工場として組織しつつ、生産量及び販売量を飛躍的に拡大させ、中京地域有数の繊維企業としての地位を獲得していた。そのため、戦前期におけるK社の資本蓄積過程を、中京地域の産地綿織物業発展に関連づけながら検討した。具体的には、『紡織要覧』を用いて、1913年、1919年、1923年における知多、遠州、東三河、幡豆、尾西地域などの織布企業のデータベース作成を実施した。そして、各産地の具体的状況を明らかにするために、『知多新聞』などの新聞資料、『名古屋商工会議所月報』などの記述資料の収集、データベース化を進めた。 また、K社の経営分析については、『営業報告書』の分析に加え、K社役員が記録した日記資料を中心に、記述情報や数値情報のデータ入力化を進めた。このことにより、K社の具体的な資本蓄積活動を明らかにする準備を整えた。加えて、『輸出繊維会館』資料、日本紡績協会所蔵資料などの収集・分析、そして国立国会図書館所蔵のGHQ関係資料、国立公文書館資料収集をも並行して進めた。このことにより、繊維業界をも視野に入れた分析が可能になるものと考えられる。
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