2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J02586
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
本廣 陽子 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 国語学 / 国文学 / 中古 / 形容詞 / 接頭語 / 源氏物語 |
Research Abstract |
接頭語を冠する形容詞は、源氏物語においてそれ以前に比べて多様化し、頻繁に用いられている。中でも、「なまいとほし」「なまうらめし」のような接頭語「なま」を冠する形容詞(以下、「なま」形容詞と呼ぶ)は、源氏物語において、それ以前に比べ格段に多く用いられ、源氏物語の用語の特徴の一つに数えられる。この「なま」形容詞に関して、源氏物語を中心に中古の用例を取り上げ、その意味について考察した。 中古における、形容詞に上接する接頭語「なま」は、下接する形容詞が表す状態には未だ届いていないことを表す。たとえば、「なまうしろめたし」の表す感情は、「うしろめたし」が表すほどの感情ではなく「うしろめたし」という感情が高まってはきたものの、まだ十分には高まりきっていないところの感情とでもいうことができよう。そして、中古の時点では、接頭語「なま」に下接する形容詞を強めるような意味あいはなかったと考えられる。 「なま」形容詞について、『日本国語大辞典』を見ていくと第二版において第一版から意味が修正された項目がある。第一版では「どことなく」「なんとなく」「少し」といった訳語が与えられているのに対し、第二版では「いやに」という訳語が当てられ、下接する形容詞の意味を強める働きに解釈し直されているのである。 本研究では、この点に着目し、第二版の意味の修正に影響を与えたのではないかと思われる、関一雄氏「いわゆる接頭語「なま」の意味-源氏物語の用例を中心に-」、進藤義治氏「形容詞類に上接する「なま」の源氏物語的用法」の両説を検討しながら、源氏物語を中心に用例を再度考察し、その意味を明らかにして、『日本国語大辞典』の修正に異議を唱えた。
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Research Products
(1 results)