2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J02656
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
町田 洋 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フラストレーション / ホール効果 / パイロクロア / 酸化物 / スピンカイラリティー / スピンアイス / 金属磁性体 |
Research Abstract |
何学的フラストレーションをもつ金属磁性体Pr_2Ir_2O_7における輸送特性について、単結晶を用いた低温実験により明らかにした。Pr_2Ir_2O_7は<111>方向のイジング異方性をもつPr 4fスピン間に、Irの5dの伝導電子を媒介としたRKKYの反強磁性的な相互作用があるにも関わらず、幾何学的フラストレーションにより低温まで長距離の磁気秩序が実現しない物質である。また、磁気秩序が抑えられたことにより、酸化物では珍しい近藤効果が実現している。さらに低温においては、磁化率が急峻な増大を示し、金属においては初めてスピンアイス状態を実現している可能性をもつ物質である。 本研究では、Pr_2Ir_2O_7において近藤効果が起こり始める低温域で、温度の減少とともに急激に増大するホール効果を見出した。また、通常の磁性体で期待されるスピン・起動相互作用に基づいた、磁化に比例する振る舞いとは異なる、磁化に非単調な磁場依存性と、強磁性体と比肩しうる大きなホール効果を観測した。これらの現象は、Prスピンが低温・低磁場下において実現している非平面な構造(スピンカイラリティー)が、近藤効果を通じてIrの伝導電子の運動に仮想的な磁場として寄与することによって引き起こされていると考えられ、新奇な異常ホール効果と言える。また、局在スピンが長距離秩序をもたない常磁性状態において、初めてスピンカイライティーによる大きなホール効果を観測した例となる可能性がある。 この研究については日本物理学会・国際会議で発表した。さらに、この成果を論文にし、Physical Review Letters誌などに掲載された。
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