2006 Fiscal Year Annual Research Report
イッテルビウム原子気体の準安定状態における新奇ボース凝縮体の生成
Project/Area Number |
06J02661
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 敦史 京都大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | レーザ冷却 / ボース・アインシュタイン凝縮 / 準安定状態 / 平均場シフト |
Research Abstract |
本研究の目的は、イッテルビウム(Yb)原子に特有の寿命の長い準安定状態3P2でボース・アインシュタイン凝縮(BEC)を生成し、さらにそのBECを利用して準安定状態に特有の現象を実験的に実現することである。そのための方法として、すでに我々の研究室で実現に成功している基底状態1SOでのBECを直接3P2状態にコヒーレントに励起し、準安定状態3P2でBECを実現することを目指している。 本研究の昨年1年間の実績は、直接励起に必要な高安定化された波長507nmのレーザ光源開発に成功し、さらにその光源を使用し世界で初めて基底状態1SOから準安定状態3P2への直接励起スペクトル観測したこと、さらにはBECに特有の平均場シフトの観測に成功したことである。 具体的には、まず波長1014nmのLittman型外部共振器レーザの周波数をPound-Drever-Hall法により外部の高安定共振器に安定化し、レーザ線幅をおよそ1kHzにまで狭窄化した。次に、このレーザの出力をテーパー型増幅器によって増幅し、さらに非線型結晶PPLNを用いて波長を507nmに変換した。これにより、遷移を実現するには十分なレーザ線幅1kHz以下出力8mWの波長507nmの光源を製作する事に成功した。そして、この光源を用いて、レーザ冷却された基底状態1SOのYb原子を準安定状態3P2へ直接励起し、今回世界で初めてボース同位体174Yb、フェルミオン同位体171Yb,173Ybについて、3P2状態への直接遷移のスペクトルを観測する事に成功した。ボース同位体174Ybの準安定状態3P2には磁気副準位が5つあるが、数μKにまでレーザ冷却されたYb原子を使い、それら全ての磁気副準位に原子を選択的に励起することにも成功した。さらに、基底状態1SOのBECの直接励起も行い、BECに特有のスペクトルの平均場シフトを観測することに成功した。これら成果は、今後の直接励起による準安定状態でのBEC実現に向けた重要な一歩となるだけでなく、狭線幅の遷移が基底状態BECを超高分解能(数kHz程度)で分光するための手段として有効であることを実験的に実証した意味で、この分野の研究に対して極めて大きな意義とインパクトをもつことは間違いない。
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