2006 Fiscal Year Annual Research Report
時間依存する平均場理論に基づく原子核の変形共存現象の微視的記述
Project/Area Number |
06J02670
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
日野原 伸生 京都大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 原子核物理学 / 原子核構造 / 変形共存現象 / 量子多体理論 / 平均場理論 / 大振幅集団運動 |
Research Abstract |
時間依存平均場理論に基づいた大振幅集団運動理論であるAdiabatic Self-consistent Collective Coordinate(ASCC)法に基づき、低励起状態において強い量子多体トンネル効果が重要となる変形共存現象を記述する実用的な理論的枠組みを構築することが本研究の目的である。本年度は次の二つの研究を遂行した。 1.Quadrupole pairing型の相互作用を加えたpairing+quadrupole(P+Q)模型を用いて一次元の集団経路をASCC法で求める数値計算コードを開発し、68Se、72-78Krで見られるオブレート・プロレート変形共存核の一次元集団経路を求めた。quadrupole pairing型の有効相互作用は大振幅集団運動の慣性質量を増大させる方向に寄与し、重要な役割を果たすことを明らかにした。続いて、この効果が励起スペクトルにどのように現れるのかを分析するため、集団Hamiltonianの再量子化を行い、角運動量が0の量子状態のエネルギーを求めた。質量の増大は変形の混合を妨げ、励起エネルギーを下げる方向に働くことを示した。さらに有限の角運動量をもつ状態を議論するために、一次元の集団経路上での慣性モーメントを計算した。慣性モーメントについても、quadrupole pairing型の相互作用の効果によって増大することを示した。今後はこの慣性モーメントを用いて回転エネルギー項をも含む集団Hamiltonianを量子化することで、角運動量が2,4等の状態を求め、この効果が回転バンドの励起エネルギーや四重極遷移といった測定量にどのように反映されるのかを議論する。 2.ASCC法では集団経路を決定する際に、対相関力によって生み出される粒子数揺らぎのモードとの結合により解が求まらない困難が存在したが、これを回避するためにASCC法を拡張し、ゲージ不変なASCC法の定式化を行った。この枠組みが実際に実行可能であることをmulti-0(4)モデルを用いて数値計算により示した。また、この枠組みでは解である集団経路を求める際に新たにゲージ固定条件が必要となるが、複数のゲージ固定条件を比較し、変形共存を記述するのに適したゲージ固定条件を提案した。
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