2006 Fiscal Year Annual Research Report
X線精密分光によるスターバースト銀河におけるX線光電離と粒子加速の検証
Project/Area Number |
06J02673
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
乾 達也 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 天の川銀河中心 / X線反射星雲 / 分子雲 / 光電離 / 時間変動 / 超新星残骸 / X線 / 天文学 |
Research Abstract |
天の川銀河中心領域に存在する巨大分子雲、射手座B2周辺領域をX線天文衛星すざくを用いて観測し、その優れた分光性能により鉄の中性(6.4keV)および高電離輝線(6.7keV,6.9keV)を明確に分離することに成功した。それぞれの輝線の強度マップを作成することにより、新たなX線反射星雲(M0.74-0.09)、および超新星残骸候補天体(G0.61+0.01)を発見した。M0.74-0.09のスペクトルは深い鉄の吸収端構造(水素柱密度で約4x10^<23>cm^<-2>)を持ち、中性鉄輝線の等価幅は1.6keVと、射手座B2分子雲のスペクトルによく似ており、その放射起源は同一と考えられる。G0.61+0.01はスペクトルが温度約3keVの電離非平衡プラズマで説明でき、空間的広がり(長径約6pc)と電離平衡パラメータから年齢7000年以下の超新星残骸と考えられる。また、過去のあすか、Chandra、XMM-Newton衛星の観測データとの比較を行い、射手座B2領域における中性鉄輝線の強度およびその空間分布が時間変動していることを発見した。輝線強度はあすか(1994年)、Chandra(2000年)観測から測M(2004年)、すざく(2005年)観測の間で約60%に下がった。また、射手座B2分子雲の輝度分布の中心点を調べると、その位置は各観測時で有意に異なり、銀河中心遠方側へほぼ光速で遷移していることがわかった。以上の結果は中性鉄からのX線放射の起源が高エネルギー粒子による衝突電離ではなく、銀河中心ブラックホール射手座A^*からのX線による光電離であることを強く支持すると同時に、分子雲からの中性鉄輝線が現在は暗い銀河中心ブラックホールの過去の活動性を知るプローブとなることを示した。 また次期X線天文衛星NeXTに搭載する軟X線検出器(SXI)を大阪大学・国立天文台・浜松ホトニクスと共同して開発を進め、従来型P型CCDで画素数2000x2000を持つフレームトランスファ型CCD「CCD-NeXT1」を制作し、その性能評価を行った。また大空乏層N型CCDも並行して開発研究を進め、その状況について報告した。
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Research Products
(7 results)