2006 Fiscal Year Annual Research Report
高赤方偏移ライマンアルファ輝線天体の起源解明を目指して
Project/Area Number |
06J02679
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 正和 京都大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 階層的構造形成 / ライマンアルファ / 光度関数 / 宇宙再電離 |
Research Abstract |
標準的な構造形成(階層的構造形成)の枠組みで、ライマンアルファ輝線天体の最も基本的な観測的統計量である光度関数を再現する理論モデルを構築した。具体的には、近傍銀河の数々の観測量を再現する準解析的銀河形成モデルを拡張し、個々の銀河から離脱するライマンアルファ光子の割合に対して現象論的モデルを導入した。階層的構造形成の枠組みで構築されたライマンアルファ輝線天体の理論モデルの先行研究では、銀河の物理的性質や時代に全く関係なくすべての銀河から同じ割合でライマンアルファ光子が離脱すると仮定されていたが、本研究では初めて次の2つの効果を導入した。すなわち、銀河の星間物質に存在するダスト微粒子による減光の効果と、星形成のフィードバックとして誘発される銀河スケールのアウトフローの効果である。 その結果、本研究のモデルは赤方偏移3〜6にあるライマンアルファ輝線天体の光度関数を非常によく再現することが示された。このモデルからは、ライマンアルファ離脱率がほぼ1となるような強いアウトフローが吹いている銀河が光度関数の明るい側を支配していることが予言されるが、これは高赤方偏移銀河のアウトフローやライマンアルファ離脱率に関する観測結果ともよく一致する。一方、赤方偏移6を越える非常に若い宇宙(宇宙年齢約10億年以下)に存在するライマンアルファ輝線天体に関しては、本研究のモデルは観測結果よりも有意に数を多く見積もってしまい、この相違の解釈としては銀河間空間においてライマンアルファ光子が減光されたとするのが最も自然であつた。これは、赤方偏移6(宇宙年齢約10億年)の前後で銀河間物質の中性度が急激に変化したことを示しており、階層的構造形成の枠組みのもと構築された理論モデルで初めて字宙再電離の時期を示唆するものである。
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