2007 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子欠損マウスを用いた小脳プルキンエ細胞のシナプス可塑性解析
Project/Area Number |
06J02714
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大槻 元 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 小脳 / プルキンエ細胞 / シナプス可塑性 / デルフィリン / 登上線維 |
Research Abstract |
Delphilinは、小脳プルキンエ細胞特異的に発現し、δ2分子の細胞内領域と直接結合する蛋白質として見出された。東京大学三品研究室との共同研究によりdelphihn 遺伝子欠損マウス(以下、Del欠損マウス)の解析を行った。これまでの私たちの研究室での解析によりDel欠損マウスでは、ある種の小脳依存的学習が野生型に比べ向上していることを示すデータが得られていた。そこで私は電気生理学的手法を用いて、小脳プルキンエ細胞から神経活動を記録し、Del欠損マウスでは運動学習に深く関わるとされる平行線維-プルキンエ細胞間シナプスでの長期抑圧について差が見られることを見出した。Del欠損マウスでは野生型に比べより弱い条件刺激によっても、長期抑圧が誘導された。このことはDelphilin蛋白質を欠損させると、プルキンエ細胞で興奮性シナプス可塑性誘導の閾値が低下することを示唆する。長期抑圧不全の動物が運動学習に異常が見られることを考え合わせると、この結果から、小脳におけるシナプス可塑性と小脳依存的な学習が関連していることが強く裏付けられる。 また、私は小脳において幼若期の登上線維シナプスで、シナプス前終末での変化を伴うシナプス伝達の長期増強と長期抑圧が誘導されることを見出した。強いシナプス伝達を示し、少数の登上線維からの投射を受けるプルキンエ細胞では長期増強が誘導され、弱いシナプス伝達で多数の登上線維投射を受けるプルキンエ細胞では長期抑圧が誘導された。発達期の小脳では、プルキンエ細胞に投射する登上線維の本数は複数本であり、成長が進むにつれて余剰な投射が除去され、成体では1本の登上線維が投射するようになる。この登上線維の剪定除去過程が、小脳での神経活動依存的に行われることを考え合わせると、シナプス前終末変化を伴う登上線維シナプスでの双方向性可塑性が、幼若期での登上線維の剪定除去過程に関与する可能性が示唆される。登上線維投射の異常は、様々な遺伝子欠損マウスの表現系として見出されており、今回の双方向性可塑性の関与が推察される。
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