2006 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子欠損マウスを用いた小脳プルキンエ細胞のシナプス可塑性解析
Project/Area Number |
06J02714
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大槻 元 京都大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 小脳 / プルキンエ細胞 / シナプス可塑性 / デルフィリン / 登上線維 |
Research Abstract |
Delphilinは、小脳プルキンエ細胞特異的に発現し、δ2分子の細胞内領域と直接結合する蛋白質として見出された。今回、東京大学三品研究室との共同研究によりdelphilin遺伝子欠損マウス(以下、Del欠損マウス)の解析を行った。私たちの研究室ではこれまでにDel欠損マウスでは、ある種の小脳依存的学習が野生型に比べ向上していることを示すデータが得られていた。そこで私は電気生理学的手法(パッチクランプ法)を用いて、小脳プルキンエ細胞から神経活動を記録し、野生型とDel欠損マウスとで違いがないかを比較・検討した。Del欠損マウスでは運動学習に深く関わるとされる平行線維-プルキンエ細胞間シナプスでの長期抑圧について差が見られ、Del欠損マウスでは野生型に比べより弱い条件刺激によつても、長期抑圧が誘導されることがわかった。さらに長期抑圧誘導に必要と考えられる細胞内でのCa2+上昇に注目し、プルキンエ細胞内にCa2+キレーターを充填する実験を行ったところ、Del欠損プルキンエ細胞ではCa2+キレーター存在下でも長期抑圧が誘導された。これらのことはDelphilin蛋白質を欠損させると、プルキンエ細胞で興奮性シナプス可塑性誘導の閾値が低下することを示唆する。さらにδ2欠損マウスのように長期抑圧不全の動物が運動学習に異常が見られることを考え合わせると、今回の結果から、小脳におけるシナプス可塑性と小脳依存的な学習が関連していることが強く裏付けられる。 さらに私は今回新しく、小脳において幼若期の登上線維シナプスではシナプス前終末での変化を伴う長期的な可塑性を見出し、このシナプス可塑性は伝達効率が増大する場合と減弱する場合があり双方向性を示した。今後は、この現象について更なる研究計画を進めたいと考えている。
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